よう

神が描くは曲線でのようのレビュー・感想・評価

神が描くは曲線で(2022年製作の映画)
3.0
スペイン産のドンデン返し型?ミステリー。
この監督による『ロスト・ボディ』は鑑賞済。
その作品もドンデン返し系なので、好きなんだろうね。

スペイン国内で賞をいくつかとってる作品とのこと。


主人公が精神科病院に潜入した探偵なのか、パラノイアの患者なのかってところが、この作品の大きな核となっている。
先に結論めいたことを言うと、そこがどっちにもとれる状態が割と長いので、ドンデン返しとしては弱く感じる。パートごとにもっとどちらかに大きく振っていればよかったのに。


序盤からあやふやな状態。
主人公が病院に入って何やら調べようとしているパート。それとは別に、雨の夜のパートが交互に挟まれる。
ここ、いつのパートなのかしばらくわからない。主人公が調べようとしてる事件のパートなのか、違う時系列なのか。
まず、この序盤のセットアップがもったいぶりすぎな印象になってて、やや退屈。
主人公が何を調べたいのかの目的がハッキリされてないしなあ。

で、主人公の目的が一応ハッキリしてからは、それなりに楽しめた。
主人公と院長の対立構図が明確になって、どちらが本当かの状態。
〈自分が信じてることを根底から否定される感覚〉ってのはヒヤヒヤする。

主人公と院長が向き合ってどちらもタバコを吸うシーンがある。そこ、タバコが演出として効いてる描写を久しぶりに観たという感慨になった。
つい怒鳴っちゃう院長に対して、主人公は余裕が出てきたことを表すのに、タバコをゆっくり吐く。ここ、よき。
さらに、そこから形勢が二転三転していくので、中盤パートはなかなか前のめりにさせてくれる。
とはいえ、「昔の時代設定といっても身元確認とかそんなルーズでいいのか?」ってなるけどね。

ある意味脱獄もの的なくだり。
そこがいちばん画的には派手めなところではある。
ただ、「なんでそんな協力してくれんの?」「そんなうまくいく?」とは思ったけどね。


主演の人の演技はよかった。
知的さを出すところもあれば、何かを企んでる感もあって。
ノリノリなダンスシーンは悪女感が出てた。
最後の表情は、心情の複雑さが表れてて、本当にどっちにもとれる形で終わる。


雨の夜に起きた事件のところ以外は真相が曖昧なままで、最初から最後まで煙に巻かれた状態というのは、ミステリーとしてフェアではないと思う。
その上、どっちかに大きく振ってるパートが短いので、語り口として巧いとも思えず。
過去の少年の不審死は自殺でいいのか、大金が結局どこに行き着いたのか、夫はどこ?……いろいろ明示されないままなんだもん。
すべての謎に答えを出す必要はないのだけど、提示されてるもので充分面白いかって言うと、そうでもないかなあ。
よう

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