hasisi

ダイブのhasisiのレビュー・感想・評価

ダイブ(2022年製作の映画)
3.6
2004年の南米、メキシコ。
マリエルはアテネ・オリンピックを目指す飛込競技、シンクロナイズダイビングの選手。
30才を迎え、選手生活最後の挑戦と決めていた。
だが、パートナーのアレハンドラが試合中に怪我を負い、出場できなくなってしまう。オリンピックの前哨戦であるワールドカップが目前に迫っていた。

監督は、ルシア・プエンソ。
脚本は、モニカ・エレラ。サマラ・イブラヒム。タチアナ・メレヌク。
2022年にAmazonプライム・ビデオで公開されたスポーツドラマ映画です。

【主な登場人物】🏊🏽‍♀️🏅
[アナリア]コーチの妻。
[アレハンドラ]パートナー。
[イレーネ]ナディアの母。
[カルメン]母。
[カルロス]選手。
[ナディア]若手。
[ブラウリオ]コーチ。
[ペゼット]女医。
[ヘラルド]父。
[ポンチョ]警備員。
[マリエル]主人公。

【感想】🥇🥈🥉
プエンソ監督は、1976年生まれ。アルゼンチン出身の女性。
長編は5本目で、すべて日本でも公開されている模様。
ドラマを中心にアクション、歴史、コメディ、ロマンスなど多種多様。
作家でもあり、脚本を手掛ける場合も多い。

軍事独裁政権化の高校教師を描いた歴史ドラマ『オフィシャル・ストーリー』のルイス・プエンソ監督の娘。

脚本は5人参加しているようなので割愛します。
スタッフは女性で固めているらしいです。

🩱〈序盤〉🏨💊
ドキュメンタリーのようなポスターだが、飛び込みの選手を主人公にしたフィクション。
最後のオリンピック。コーチとの関係性で考えうるあらゆるイベントが詰め込まれていて、めまぐるしく畳みかけてくる。

驚きの連続なのでリアクションする役の主人公、マリエルの心境が想像しやすく、入りやすい。

[マリエル]🎧
過去にオリンピックを経験しているベテラン選手。
演じているのは、カーラ・ソウザ。2010年から映画16作目で売れっ子のよう。
制作も担当している。

経歴を見るかぎりは、女優一筋のようだが、筋肉質なアスリートの体をしている。飛び込みも見ていて綺麗だし白けない。
映画のために仕上げたのだろう、並々ならぬ情熱である。
演技の上手さは言わずもがな。

🩱〈中盤〉🚌🥂
🎤スキャンダル。
日本でも時々報道される有名人の闇。
一昔前だと死ぬまで叩かれる印象だったけど、最近はセカンドチャンスが確立されて、マスコミもゆるやかな対応に変化した気がする。

ネット番組が、テレビで見かけなくなった人達の受け皿になっている。
メディアが乱立して人材不足もあるのだろう。
YouTuberになって自力で這い上がってくる人もいるし。
(被害者からすれば、地獄に落ちろ、だろうけど)

💆🏽‍♀️ミステリー要素。
登場人物の内面が普段会う人たちとずいぶん違っていて、印象的。
メキシコの文化だろうか、子供のように口で訴えてくる人が多い。
自分を大きく見せようと強がっていなくて剝き出しで清々しい。

大人の世界が描かれているのだが、スポーツ題材もあって、日本の漫画やアニメに近しいものがある。

[ナディア]📔
飛び込みの若手選手。14才。
演じているのはデジャ・エベルゲニー。詳細分からず。お姉ちゃんがTikTokやっていて、ちらっと映っていた程度。

女性監督らしく、少女の内面の描き方が上手い。得意分野なのだろう、日本ではタブー視されているくらい幼さに振ってある。
見ていると関わっている男性陣と感覚が近くなってゆくので、淫行条例に触れそうでドキドキ。男の欲望を刺激して煽ってくる。

👀ヒトコワ。
華やかな世界と、それを物陰から見つめている人。
地獄の仲間に引き入れようと、足を引っ張るタイミングを狙っている。
この手の人と密接な関係をもたざる得なくなるのは、交通事故のようなもの。
朝ドラなんて無限に光と影の話だし。
『リベンジ・スワップ』のように、両方の世界を描ける人は創作活動に向いている。

アクシデントもオリンピックの選手村のよう。体を限界まで鍛えて、もりもり食べる人たちだから、常人では有りえないようなトラブルが起きる。

🩱〈終盤〉📺👂🏽
🌊ラストチャンス。
基本の型に収まらないのに、ちゃんとスポコンのように盛り上がる不思議。
闇に隠れた地獄の戦い。音楽の力が大きい。
日本の中でがんじがらめになっている価値観が崩壊するようで、たまには南米の映画も悪くない。

ただ、クライマックスから落ちにかけては、呆気にとられた。
男目線だと斜め上の発想で思考が追いつかない。想像力が刺激されるし、色々考えさせられるので、悪くはない……気はする。

【映画を振り返って】⚓🏖️
スポーツものって好奇心を刺激しないので、中々触手が伸びない。だが、いざ目を通すと面白くてはまる。きっと、わたしがアスリート体質だからだろう。

見終わると実話がモチーフになっていることが判明する。
マリエル役のカーラ・ソウザの経歴に目を通すと、似たような事件を経験しているので、おそらく彼女の告白がモデルになっているのだと思われる。

日本でもハリウッドでも近年、映画界を騒がせたばかりなのでタイムリーなネタ。

日本のスポーツ界でも同じような闇が報道されているだろうから、そのまま映画化できそう。
運動が得意な俳優さえ見つけられたら、低予算でも撮影できるだろうから真似しやすいだろう。
(映画業界の闇を匿名でもいいけど)

シンクロナイズダイビングが、テーマとぴったり合っていて、真相に触れる終盤辺りはお見事。リアルなのに深層心理を描いていて、真似したくなる魅力がある。

セクースシーンも複数。終盤は会話もエロチックなので興奮するが、いかがわしくて罪悪感にさいなまれるのは映画ならでは。

90分映画でイベントが詰め込まれているわりに、エンタメ要素に乏しく、先も気にならないので独特な退屈さはある。
それでも、隠微な影の世界のわりに、それなりの達成感も得られるから鑑賞後感は悪くない。

主人公は競泳水着の美女で、プールを舞台に背筋が凍るような物語。暑さが厳しかった今年の夏の盛りに見たかった映画でした。
(残暑もきびしい🥵)
hasisi

hasisi