いろどり

胡同(フートン)の理髪師のいろどりのレビュー・感想・評価

胡同(フートン)の理髪師(2006年製作の映画)
4.0
80~90年代のチャン・イーモウ作品、チェン・カイコー作品に見られる古き良き中国の面影を残した味わい深い映画だった。

北京オリンピックで立ち退きを迫られる北京の中心地の胡同。胡同とは北京に古くから残る細長い路地や横丁のことらしい。近代化されていない下町風情のある街並みが美しい。路上で髪を切る人が出してる看板「角刈り王」にほっこり。
 
抗えない時代の波、寄る辺ない世代交代。信頼、絆の反対側にある利便性。西洋化との対比は哀愁と皮肉とちょっぴりのユーモア。いつも櫛をポケットに入れて身だしなみを整える凛としたチンおじいさんを見守る。終盤は何度も「あっ、おじいさん…」と思わせる。監督は策士。

実際に理髪師のチンおじいさんは90歳超えなのにしっかりセリフを覚えていて素晴らしい。特典映像での人の良さそうな笑顔は思わずファンになりそう。まさか宣伝で来日していたなんて。リアリティーあるドキュメンタリー風だけど情緒ある映像美はキアロスタミ風。素敵な映画だった。
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