シニア物が観たくなり、このジャケ写の職人っぽさに惹かれて、全く知らないモンゴル人の監督が作った中国の作品です。
特典映像で知ったのですが、この主人公は92歳の素人の理髪師チンさん。チンさんの実生活をドキュメンタリータッチでカメラに収めていますが、ちゃんと台詞として覚えて話しています。
北京の旧城内にある胡同(フートン)は古き良き街並みを保ち続けていたが、北京五輪を機に近代化の波が押し寄せていた。
チンさんはいつだって自分らしく生きて来た。それが大事と言わんばかりに健康に留意し一人暮らしで現役で仕事をしている。
馴染みの客を相手にし、時たま出張で出掛けることもある。
「放睡」または「五花の鎚」とは、馴染み客にだけに無料サービスでする指圧のこと。ツボだけを叩くと体内や心の中の熱や毒が全部解消される。鼻水や尿で出て行くんだとか。親しい人への心遣いだった。
「その後は日本からやって来た奴らが気に入って「按摩」って言葉が出来たけど邪道だ」と言っていた。
仕事の他には近所付き合いを大切に、毎日、趣味の麻雀。
少しだけ賭けて楽しんでいる。
息子が近くに住んでいて様子見にやってくるけど、92歳の親からまだ小遣いもらってるような頼りなさ。
仲間が亡くなっていく。ふと自分の葬儀のことを心配し、葬儀屋に連絡してみたり、遺影写真を撮りに行ったり。
何気ない日々を監督の優しさで映しているほっこりする作品だった。
特典映像で語っていたチンさんの言葉を書き留めました。
「どのように生きるか?どのように死ぬか?それだけ。穏やかに生きるように心掛けている。そうすれば周りもそうしてくれる。周りの人を家族のように接すればいいんです。人の悪いところや欠点だけが見える人は自分にもそういう所があるものです。人々に優しくすること。穏やかに生きるのが一番。」
何よりの言葉ですね。