駆け出しアーティストとして世間から注目を集める彼氏に対抗するため、ドラッグで身体を破壊することで世間から注目を集めようとするお話
所々『イディオッツ』や『セレブレーション』のようなドグマ95的演出が入って面白い。特に冒頭のレストランでの場面やピーナッツアレルギーを装う会食の場面でそのような演出が効果的に用いられ、場の気まずさや緊張感を伝わりやすく演出している。しかし本題である「ドラッグによる人体破壊と自己顕示欲」に入ってからはあまり盛り上がることはなく、適度に面白い状態のまま、突っ切ることなく終わってしまった印象を受けた。
SNSによる自己顕示欲と言うよりかは、現代アート界隈やファッション界隈を皮肉って描いている。いつの間にか様々な人達が携わり、ドラッグに侵されてボロボロになった自分の身体が「感動ストーリー」として世間に消費され、口では綺麗事を述べながら目の前に居る障害者の存在を見て見ぬふりするファッション会社に携わる。いつの間にか自分の存在が大きく取り扱われるようになり、「消費」のサイクルに自らが囚われてしまう。その取り返しのつかなさと、ドラッグが刻一刻と自分の身体を蝕んでいる現状が並行的に進んでいくのが皮肉的で面白い。一部ボディホラー的な箇所もあり、後半に進むにつれて身体の変化がより目に見える形で強烈に現れるのが恐ろしさを醸し出しており良かった。
ただ、やっぱりこのテーマならもう少し突っ切ってほしかったなという気持ちは拭えない。
