クドゥー

青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ないのクドゥーのレビュー・感想・評価

4.5
『遅すぎることはない、この世界線にいる僕らでも』

優しさを目指す少年が思春期に悩む少女たちと向き合う「青春ブタ野郎シリーズ」新作劇場版は、一言で言うと大人の階段を登って家族が再生するだけの物語を蓄積によって花咲かせ、どこかで努力をしてきたみんなに手を差し伸べる青春アニメーション映画の最高傑作。

始まった瞬間から流れている時間が違うと感じてしまう作品を評価できないことは承知の上だが、平穏な日々にさざ波のように押し寄せる転機がもたらす空気に神経が研ぎ澄まされて、絞られた音場に浸っていると親が子に子が親に伝えたい思いの丈が染み入って溶ける。

「おでかけシスター」でも素晴らしかった決意の表情に揺らぐ一瞬の垣間見える作画が凄まじく、キャスト陣の芝居に関しては憑依を超えて感情が声劇の形をしているとすら感じるが、何の因果か公開日の今日は渋谷事変で悪くなかったと思い至った放送日と同じだった。



鑑賞記録
2023.12.1
チネチッタ川崎11
→初日初回に立ち会えたことが誇らしい何も足さず何も引かない上映。全体的に丸みを帯びたみたいな絵も音も今の尖った劇場情勢と一線を画し、ゆえに夢から覚めたようなラストカットの電撃まで心地よい。続けてLZで夢を聞くまでのタイムスケジュールも完璧の一言。

チネチッタ川崎8LIVEZOUND
→通常上映との連続鑑賞だからこそ際立つエモに訴えるザウンド上映。劇場特性の台詞・劇伴・効果の分離性に加えて内外のニュアンスが豊かで、音量の幅も相まって作劇の淡々とした流れに花を添えている。チャンネルが絞られているからこそ音響の可能性は無限である。
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