『世界』という概念ができたばかりの世の中。
「世界で一番あなたが…」
自分たちは世界の中にいるのに、
その『世界』を相手に伝えるために表現することができず足掻く。
その場面で、
丸い桶の中に静かに雪が降り積もっていく描写・・・素敵だ。
辞書的な意味は伝わらなくとも、
雪が積もるように、伝えたいことが相手の心に折り重なっていく。
そんなふうにして、
この映画の主題って、見る人の中に伝わってるのかも。
食べて排泄して肥やしになって作物ができて。
生きて死んで生き物の糧になって土に還って。
そんな生態系の循環とそれに携わる人々。
それと同じように、
大切な人と生きて、失って。
心を喪失して、再生して、また大切な人とつながって。
糞尿も生命も人の心も、
静かな循環の中で巡る世界。
足りないものを、
お互いに補い合いながら巡る世界。
忘れそうになるけど、
時々ふりかえって、自分の世界を色づけていきたいです。
ちなみに、ずっと『せかいの きおく』と思ってたが、
『せかいの おきく』だった。
いやー、いい映画だった。
静かで何にも起こっていないけど、
内面をゆっくりと掘り返してくれる作品。
現代を舞台にするのではなく、
江戸時代あたりが舞台となるこのような作品が、
つくづく自分には合っています。