こーじ

せかいのおきくのこーじのレビュー・感想・評価

せかいのおきく(2023年製作の映画)
4.0


『世界』という概念ができたばかりの世の中。
「世界で一番あなたが…」
自分たちは世界の中にいるのに、
その『世界』を相手に伝えるために表現することができず足掻く。
その場面で、
丸い桶の中に静かに雪が降り積もっていく描写・・・素敵だ。
辞書的な意味は伝わらなくとも、
雪が積もるように、伝えたいことが相手の心に折り重なっていく。
そんなふうにして、
この映画の主題って、見る人の中に伝わってるのかも。

食べて排泄して肥やしになって作物ができて。
生きて死んで生き物の糧になって土に還って。
そんな生態系の循環とそれに携わる人々。
それと同じように、
大切な人と生きて、失って。
心を喪失して、再生して、また大切な人とつながって。

糞尿も生命も人の心も、
静かな循環の中で巡る世界。
足りないものを、
お互いに補い合いながら巡る世界。
忘れそうになるけど、
時々ふりかえって、自分の世界を色づけていきたいです。

ちなみに、ずっと『せかいの きおく』と思ってたが、
『せかいの おきく』だった。
いやー、いい映画だった。
静かで何にも起こっていないけど、
内面をゆっくりと掘り返してくれる作品。
現代を舞台にするのではなく、
江戸時代あたりが舞台となるこのような作品が、
つくづく自分には合っています。
こーじ

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