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せかいのおきくのKHのレビュー・感想・評価

せかいのおきく(2023年製作の映画)
4.0
キネマ旬報で1位を取ったので遅れて鑑賞
映像と演技が本当に素晴らしい「糞」映画。
おきくの可愛らしさ、中治のまだ青い感じ、そして1番は矢亮が魅力的だった。
時代的にみれば江戸末期で、これから明治維新とつながる激動の時代。しかし長屋の生活はいつも通りの平穏としたもので、その途方もない日常に対する諦念と悦びが交互に感じられる。
要素として挙げるなら、今日下水道が日本の各地に張り巡らされ汚いモノ(もとい糞は穢れでありながらも生の証)をなるべく遠ざけて一般の人の目に届かないようにしてきた現代において、当時の江戸の下肥買いとそのシステム(肥料として再利用)は何か生に対する象徴的なものを感じる。そんな仕事をして糞で江戸を支える矢亮の、この世界の空虚さを笑うシーンが好きだった。
色の制限、言葉の制限などこの映画の様々なところで見られる表現の制限が逆説的に新たな表現を生み出し豊かにしていると感じた。

現代の映画でこんなにモノクロであることの必然性を感じた作品は他にない
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