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南太平洋のtakのレビュー・感想・評価

南太平洋(1958年製作の映画)
3.3
個人的プロジェクト「名作映画ダイジェスト250」(ロードショー誌80年12月号付録)制覇計画のためセレクト。

うちの親父殿世代には、きっと思い出深い映画なんだろう。8トラック(懐)のカーステレオで、このミュージカル映画の代表曲「魅惑の宵」を聴きながら、映画とロッサノ・ブラッツィについて話していた記憶がある。当時はメロドラマの色男役を多数演じていた人。あーそうだそうだ、僕も「旅情」は観たことある。ベネチアを旅行するアメリカ女性をしつこく口説くイタリア男だった。「南太平洋」では、ポリネシアで農園を営むフランス人の中年寡(やもめ)役。従軍看護士のアメリカ女性に恋をするのだが、どうも暗い過去があるらしい。

ブラッツィの歌は吹替えのようだが、彼をめぐるエピソードは、中年男とヤンキーガールのコテコテメロドラマなので、持ち前の魅力が発揮されているのだろう。彼女を丘の上から見送りながら、
この恋を逃してはならなーいー♪
と歌う野太い低音に、恋する男の執念を感じる。若い頃これを観てたら、多分暑苦しいヤツとしか思えなかっただろう。

映画ではもう一つの恋が描かれる。ポリネシア海域に展開する敵兵力偵察のためにやってきた若い中尉が、バリハイ島に住む現地の娘に恋をするエピソードだ。アメリカ兵たち相手に仕事をする現地の肝っ玉母ちゃんみたいな女性が、彼に向かって高らかに歌うのは、このミュージカルの代表曲「バリハイ」。
バリハイ島があんたを呼んでいるー♪
女性との関わりが欲しい部下の兵士たちと共に島に渡った中尉。美女たちとエキゾチックな祭りを部下が楽しんでいる間に、肝っ玉母ちゃんが中尉と美しい娘を引き合わせる。片言のフランス語でしかコミュニケーションがとれないけれど、二人は確実に恋におちた。イチャイチャする二人を見ながら肝っ玉母ちゃんは言う。
「いい婿になるよ!」
婿探しだったのかっ!🫢

その場面で流れる✋🫱手振りが楽しい楽曲がHappy Talk。あー、知ってる♪このミュージカルナンバーだったのか。

そんな楽曲は確かに素晴らしいのだけれど、ミュージカルシーンになると、画面の色彩が突然変わる。舞台照明を意識しての演出らしいが、テレビの色彩設定がおかしいのかと疑ってしまう。コピーガードが働いて色調が不安定になるVHSの映像を思い出してしまった。てか、そんな現象と一緒にしては、ジョシュア・ローガン監督に失礼ですよねー💧

女性を賛美する楽しい曲There Is Nothin' But A Dameが好き。第二次世界大戦下のポリネシアが舞台なので、字幕で"敵"と訳されているのは"Japanese"。クライマックスは歌唱シーンが控えめになって、危険な任務に就いた中尉とフランス男が話の中心となっていく。このパートに力を注ぐと冒険活劇ぽく仕上がりそうだし、人種偏見もテーマとして含まれるだけに、もっと描きようがあるだろうと古臭く感じる方もあると思う。だがそれも時代。バリハーイ♪のメロディがしばらく頭に残ること必至。
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