ぶみ

コカイン・ベアのぶみのレビュー・感想・評価

コカイン・ベア(2023年製作の映画)
3.0
このクマ、最高にキマッてる。

エリザベス・バンクス監督、ケリー・ラッセル、オールデン・エアエンライク等の共演による実話をベースとした動物パニック。
コカインを食べてしまった巨大クマから逃げ惑う人々の姿を描く。
一応実話ベースとなっているが、合っているのは1985年9月11日、麻薬密輸人のアンドリュー・カーター・ソーントン2世がFBIに追われ、セスナ機からコカインが入ったバッグを投げ捨てた結果、約三ヶ月後に薬物の過剰摂取により死亡したと見られるツキノワグマが発見されたことのみであり、実際にクマがハイになって人を襲ったわけではないため、先日観たニール・ブロムカンプ監督『グランツーリスモ』同様、実話から着想を得たフィクションというのが正解。
物語は、冒頭そのセスナ機からコカインが落とされるシーンでスタート、以降、その落とされた森に訪れることとなった観光客、刑事、不良グループ、森林警備隊、救急隊員、こどもとその母親にコカインを追う麻薬王一味等が、それぞれハイになったクマと対峙するというスタイルで展開するため、思いのほか群像劇テイストが強めであり、実際にクマが登場するシーンはそんなに多くない。
ただ、一度登場すれば、かなりのスピードで追いかけられ、凶暴さが増している状態であるため、スリリンクかつバイオレンス度高めな展開を見せてくれることに。
そんな中、クセ強めの役を演じることが多いレイ・リオッタが麻薬王として登場しているものの、残念ながら鬼籍に入ることとなってしまったことから、その姿を目に焼き付けておきたいところ。
私的には救急車のエピソードがツボであるとともに、そこに何故か80年代を模したようなシンセサイザーが鳴り響くポップな劇伴が流れるという、何ともアンバランスでシュールな映像は、本作が長編3作目となる監督のセンスか。
いかんせん、まだ明るい日中は良かったものの、終盤からラスト向けて日が落ちてからの暗闇のシーンは、どう収拾をつけてよいのかわからなくなってしまったのか、失速してしまった感があるのは否めない。
監督の真面目さからか、そのタイトルから想像するようなB級感がなく、コメディにしたかったのか、パニックものにしたかったのか、はたまたホラーにしたかったのかがよく見えなくなってしまっており、中途半端に終わったような印象が拭えず、もっと振り切れていた方が、より良くなったかなと思うとともに、イザイア・ウィットロック・Jr.演じる引退間近の刑事が、途中からマキタスポーツに見えて仕方なかった一作。

親は必ず見抜く。
ぶみ

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