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コカイン・ベアのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

コカイン・ベア(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

1985年、麻薬密輸人が飛行機からコカインの入ったバッグを持ってパラシュートで飛び降りようとするが、ドアに頭をぶつけて意識を失って落下死。コカインが落下した国立森林公園では、アメリカグマがコカインを食べて非常に攻撃的になり、ハイキング中の男女に襲いかかる…。

ある日森の中、熊さんに出会った〜🎵
そしたら、熊がコカインで凶暴化してたもんだから、さぁ大変。
ただそれだけの話で、いかにもB級映画のノリだが、登場するキャラクターがどれも立っていて、一体誰が食われるのか?とハラハラする。
アニマルパニックホラー(+コメディ)の佳作である。

妻をガンで亡くしたエディは、その哀しみから立ち直れずにいたが、ギャングのボスである父親のシドから「いつまでもメソメソするな」と、森に落ちたコカインの回収を命じられる。
シドは最も信頼する部下でエディの親友・ダヴィードにエディの世話を命じる。

一方で、引退間近の刑事ボブは、そのコカインがシドのもので、落下死した売人の位置から国立公園の森に残りのコカインがあると推理。
愛犬を新人警官のリーバに預け、ボブは1人で山へと向かう。

ギャングコンビと、警察の麻薬争奪戦か?と思いきや、一般人も絡んでくる。

絵を描くことが大好きな13歳の女の子ディーディーは、森にある滝を描きたいのだが、看護師の母親サリは忙しくてそれどころではない。
友達のヘンリーと一緒に学校をサボり、こっそり森へと足を踏み入れる。
2人は山で大量のコカインを発見。
そこにコカインベアが出現し、襲いかかってくる。
ヘンリーは木に登って逃れるが、ディーディーは逃げ惑い行方不明に。

ディーディーを探しにきた母サリは、公園レンジャーのリズと動物管理官ピーターを頼る。
3人は森へ探しに出るが、ピーターが熊に襲われる。
それを見て恐怖するも、ヘンリーを見つけたサリは娘を探しに、さらに森の奥へ進む。
母は強しである。

さらに、いかにもザコキャラも絡む。
無人になったレンジャー事務所で、非行少年3人組がたむろしていると、ダヴィードとエディが現れる。
不良3人はトイレでダヴィードを強盗しようとするも、敢えなく返り討ちに。
1人から「森で見つけたコカインを東屋に隠した」と聞いたダヴィードは、彼らを道案内にして森へと入っていく。

重傷を負いながらレンジャー事務所まで戻ったリズは、追ってきたコカインベアと戦闘になり、駆け付けた救急隊員と共に救急車で逃げるが、ベアは恐るべき速さで車に追いつき襲われてしまう。

ギャング一味、子どもと母親、警察、不良少年たちと、何の接点もなかった人々がそれぞれの目的で山へ入っていく。

果たして、コカインベアに襲われずに母親は娘を助けることが出来るのか?
そしてギャングはコカインを回収できるのか?
…とハラハラするのが脚本の妙。

ラリった熊だけでは話が持たぬと、登場人物それぞれが山に入らざるを得ない理由を描いた後、いつの間にか、誰も助けには来ない状況を作り出している。

母親サリもまず警察に捜索願いを出すのが筋だろう。
警官ボブもレンジャーのリズも応援を呼ばずに1人で対処しようとするのが間違いのもと。
80年代という設定もあって、当然携帯電話など無く、助けなど簡単に呼べない。
「誰か1人でも戻ればいいのに」と思うが、いつ子どもが熊に襲われるか?コカインが全て熊に奪われてしまわないか?と引き返そうとする者もいない。
ある意味で森の中でのシチュエーション・スリラーと化して行く。

そこにやって来たのは、これまた単独行動の麻薬王のシドと裏切り者の新人警官リーバ。
シドはライフル一丁だけで心許ないし、リーバはギャングとの関与を知られまいと、応援を呼ぶ気配も無く早々に逃げて行く。

その後、コカインベアが洞窟に隠していたコカインと粉で真っ白になった子熊、ディーディーを一行は発見するが、戻ってきたコカインベアに襲われる。

サリは子どもたちも川に飛び込み難を逃れる。
ギャングコンビも付き合いきれないとシドを見捨てて川に飛び込み、欲をかいてコカインを熊から奪おうとした元締めのシドは熊たちに喰われる。

結果的に熊の母子は森から人間たちを追い出し、平和に暮らしたとさ…(笑)
めでたし、めでたし🎵である。
もちろん生命が助かった者たちにとっても、めでたしだ。

のんびりとした田舎の空気感の中、登場人物がちょいちょい笑わせるギャグの合間には、目の覚めるような残酷なスプラッタ。
熊さんはカワイイけれど「やっぱり野生動物は怖いのだ」と、充分理解できるアニマル・パニック。

「こんなことあり得ない」と思ったら、1985年にアメリカのジョージア州で熊が麻薬密売業者が投棄した大量のコカインを摂取し、薬物過剰摂取で死亡した実際の事件をモチーフにしているとか。

その事実以外は脚色だろうが、これだけエンタメとして膨らませることが出来るとは女優エリザベス・バンクスの監督としての才能は確かなもの。
本作は2022年5月に死去したレイ・リオッタの遺作。
彼も監督の才能を認めていたに違いない。

カワイイけれど、野生の動物はキッチリ怖い(しかも残酷でグロい)。
これはなかなか無い設定かも。
アニマル・パニックでは新機軸と言えるだろう。
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