あやたか

658km、陽子の旅のあやたかのレビュー・感想・評価

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)
4.5
諦めたかったわけじゃない。本気で夢を叶えてやるって、そう思ってた。ただ時間は刻々と過ぎるし歳も取る。頭では分かっていた厳しい現実と直面せざるを得なくなった時、それは同時に過去と対峙するということでもあり、一度に数々の痛みが陽子を襲う。苦しくて悔しくて情けなくて悲しくて。孤独である方が楽だったかもしれない、傷付くことも誰かと比べて落ち込むこともないのだから。それが自分を守る術となる場合だってあるんじゃないか。でも、他人との関わりが痛みを癒し、温もりや優しさを与えてくれることだってあるはずだ。旅を通して様々な人と出会い、その過程で自らの過去と向き合い、今を受け入れようとしていく。そうして次第に抱えていた思いが露わになり、感情が溢れ出す。ゆっくりと、でも確かに陽子の時間は前に進み始めたのだと感じて、きっとその先には明るい未来がひらけているはずだと、そう信じたいと思った。
あやたか

あやたか