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658km、陽子の旅ののののののネタバレレビュー・内容・結末

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

*42才、独身、在宅勤務、友達0…

ちょっとドキっとした。
私の10年後、こうなるはずがないと言えない。
私は少ないけれど友達はいる。
でも、友達が結婚して疎遠になるなんて
よくある話な訳で、私も暗い部屋で独り
動画みて笑ってるだけの未来があるのかも。
陽子は日本にたくさんいるんじゃないかと思う。

===
*今の自分は他人のせい
*死はその人がくれる最後のプレゼント

道中、亡き父と向き合う。
子どものころ「うるせー」と言われたこと、
自分のことを諦められたこと、
そんなことに傷ついている。

そう、思っていたけれど、
それは今の自分の状況を誰かのせいにしたい、
つまり父のせいにしたかっただけなんだと思う。

車に乗せてくれた男に交渉を迫られる
「一晩寝て、目的地まで送ってもらうか、
 ここで降りるか、あなたが決めてください」
そしてホテルに入ることを「選んだ」。

そのくせ、酷いことをされたと言わんばかりに
泣き出し、灰皿でぶん殴ろうとする。

でも、自分で選んだんだよ。
レイプとは言えないんじゃないか。

このシーンがあったから、
父のせいにして生きてきたんだと思った。
そして、そのことに気がついて、
最後に父の手を握りたいと思えたんじゃないか。

死はその人がくれる最後のプレゼント、
という言葉を思い出す。
父の死は、陽子が自分と向き合って
他人とコミュニケーションを取れるようになる
きっかけ、プレゼントになったのでは。

===
*嫌なヤツからの優しさは受け取り難い

最初に車に乗せてくれた女性。
多分一般的に見たら超親切。
覇気のない怪し過ぎる40代女性を
車に乗せて、ごはんまで買ってくれる。
しかも気を遣わせないように
「買いすぎちゃったから食べてよ」と言う。

でもこの人と別れる時、陽子はお礼よりも
「お金貸してください」という。

一見、陽子が酷いやつに見えるんだけど、
この女性、なかなか嫌なヤツ。

陽子が独身と聞いたら
「私には男も子供もいない人生なんて考えられないな〜」とか言う。
「あんたも幸せそうな家族みてイラっとするでしょ?」とか言う。
こんなこと言われたら優しくされても
素直に受け取ることができない。

一方で老夫婦の優しさが沁みる。
「知らないヤツの車に乗るなんて、危ないからもうやめろよ」
心配してくれる言葉はこんなに暖かいのか。

===
*生きていく力がない人にイラッとしてしまう

生きていく力なさすぎだろ、という人を
見るとイラッとすることがある。

陽子についても、
サービスエリアに置き去りにされた時点で
親戚に電話して事情話せばいい。
今回は違ったけど、電話番号がわからないなら
警察にでも電話すればいい。
ヒッチハイクしようにも突っ立ってるだけ。

なんでそうなの?って考えた時に
「それでも生きてこれたからでしょ?」
「いつも誰かが助けてくれたんでしょ?」
「随分楽して生きてきたんだね」
と自分の中で酷い言葉がどろどろする。

でも結局これは自分が努力しないと
手に入れなかったものを
あっさり手にすることができる人への
妬みつらみでしかないのだと思う。
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