ペコリンゴ

春のめざめのペコリンゴのレビュー・感想・評価

春のめざめ(2006年製作の映画)
3.7
記録。
恋する思春期、人は誰しも詩人になる。2人の女性を同時に想う少年の揺れ動き。

三鷹の森ジブリ美術館による初の配給作品。まさに動く油絵。アニメーションという枠組における表現技法に対する印象の境界を広げる力を持った短編だ。

物語としては若干抽象的で感性を試されるような趣きがあるように思えなくもないけど、例えよく分かんなくても、視覚に飛び込んでくるものは否応にも眼を惹きつけて離さない。

終盤になるにつれて、よりダイナミックかつ縦横無尽に動きまくるカメラワークは圧巻。この手法の絵をこれほどまでにグルングルンと動かすのは並大抵ではない技術と労力が求められるのは想像に難くない。

実際、この30分に満たない作品の完成には3年かかったそう。途轍もない情熱の結晶である本作は、セルやデジタルよるアニメーションとは明らかに一線を画する感動を与えてくれるはずだ。