OASIS

春のめざめのOASISのレビュー・感想・評価

春のめざめ(2006年製作の映画)
4.5
ロシアの小さな町に住む16才の少年が、年齢の異なる二人の女性に恋をしてしまうという話。

話としては思春期の男の子の淡い初恋を描いているのだが、驚くべきはその表現方法。
油絵がそのまま息を吹き込まれ動き出したかの様な今まで見たことも無い映像に終始鳥肌が止まらなかった。
1カット1カット写真におさめて額に飾りたくなる程美しい映像の連続に、アニメーション表現の極致を見た。

少年の家に住み込みで働く少女パーシャと、隣に住む年上の令嬢セラフィーマ。
貧乏だが献身的で可憐なパーシャと、掴み所が無いが妖艶な魅力を放つセラフィーマの間で揺れる少年の想像の世界を、アニメでしか表せない突飛で自由自在なカメラワークで描き出す。
想像が現実を呑み込み、想像から現実が吐き出される瞬間の移り変わりも素晴らしく、陸・海・空を超えて冒険を繰り広げる妄想ワールドの色鮮やかさにも溜息が出る。
パーシャとのキスシーンは正に夢見心地の美麗さで少年と同じく翼が生えそうになる。

少年はパーシャとの関係に真実の愛の片鱗を見出すも見切りをつけてセラフィーマとの秘密の逢瀬に勤しむが、その間に町では現実的な恐怖が次々と溢れ出してくる。
牧夫の家で起きる殺人事件や火事、人を襲う暴れ牛など、その恐ろしさすらも絵画的な表現によって優しく包み込みます。

綺麗な物ばかり映し出す映像とは裏腹に、お話の方は純粋で美しい物語ではなくて。
目の前にある性に盲目な少年が、現実の生の脅威を目の当たりにした時にやがて見える本当の恋に胸が苦しくなりました。

30分に満たない映画ですが、冒頭からラストまで一気に引き込まれ、その時間が文字通りあっという間に過ぎてしまう映像美には目が釘付けになりました。
とっても観やすいです。
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