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しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜のがらがらのレビュー・感想・評価

3.0
初の全編3DCGアニメでの劇場版。3Dは悪くなかったけどシナリオがダメ。

3DCGの違和感はなかったし、3Dのおかげで立体的なアクションが面白くなっている部分もあった。例えば冒頭のしんちゃんとみさえの追いかけっこシークエンスは、近所をグルグル回るだけなのに3Dだからこそ野原家の近所ってこんな感じなのかと見えて新鮮さがあった。

問題なのはシナリオ。最近のクレしん映画は社会問題を入れ込むことが増えてきていて、それ自体は全然良いことだと感じてるんだけど、今回はテーマに対しての大人からの回答が全く納得できなくて残念だった。

友達も恋人も金もなく、趣味がドルオタの派遣社員の男が超能力を手に入れて社会の不満をぶつけていくという敵役の設定が気になる。暴走は超能力のせいだとしても、暴走前から周囲の人間への態度やアイドルに勘違いする姿など、いわゆる弱者男性への偏見が強い。

ドルオタという設定にするなら、ドルオタ仲間を出すとかしんちゃんがアイドルにハマっているとか、アイドル業界の闇に更に絶望するとか、そういう必然性を出さないと底辺=ドルオタみたいな悪意ある設定だけで終わっちゃうのでは。アイドルに恋人ができるのは全く問題ないことなので、それで絶望させること自体に悪意がある。

それにテーマだけでなく展開も大人からすると重過ぎ。特に立て篭もりのシーンはギャグレベルでは済まないシリアスな演出、かと思えば大人達の中途半端な対応にモヤモヤ。

社会への不満と超能力、この組み合わせならもっと色んな話に出来た気がする。しんちゃんの運動会の結果もお咎めなしでどうなのかと思ったし、それこそ説教するなら超能力や不正によって獲得した結果には意味がないとかそういう方向性にも持っていけたはず。

超能力の種類の説明があったのにその設定も活かしきれないまま終わった。

大人が見ると問題ありまくりの作品だけど、子供が見る分には派手で分かりやすい展開と最後まで細かいギャグがあって、劇場でも子供達は笑ってたのが救い。あとエンドロールの演出も良かった。
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