故ラチェットスタンク

しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜の故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

3.0
『大いなる無責任』

衰退期にある日本において、ネグレクトを受け、いじめに遭い、非正規雇用労働者としてうだつの上がらない日々を過ごし、推し活に幸せを見出す事しかできない諦観思考を埋め付けられた弱者に対して、上の世代と努力で勝ち組になれた同世代が「頑張れ」などという無責任な欺瞞を押し付ける凄い映画。「他者への愛を持とう」だなんて言葉を愛を受けずに育った人間に対して浴びせかける無神経さ。ともすれば時代遅れでテンプレートでステレオタイプな"非リア充"とやらを描写してしまう不勉強さとそこに愛着を見出そうとしない(のに彼自身はギャグで茶化す)残酷さに対してあまりにも無自覚で、これは正に今の日本を作ってきた側の視点だろう。一時が万事その調子なのに3DCGの質感のせいで嫌なリアリティが出ている。にも関わらず、それを茶化して目を逸らし甘言を振り撒いて若者をさらなる搾取構造へと送り出していく。そんなんだから今の日本はこんなことになったんじゃなかったのか。お前たちが逃げるためだけに、若者を利用するな。

的なゴニョゴニョする部分は置いておいてオープニング周りのクロスカットとかロボット同士が弾幕を飛ばしあってるところとか、別に素直に見ていて楽しい。しんちゃんとみさえの追っかけっことかはパイロットフィルムかと思うほど上手くいってないけれど、その変もまあうんと言う感じ。

ただ何より虚構に何かを仮託せずに物語を語るってちょっとどうなんだとは思う。虚構としてのしんちゃんとか充くんが好きなアイドルの話とかは別にいいんですが、カンタムロボの周りの扱いがちょっとなあ。