砂場

瞼の母の砂場のレビュー・感想・評価

瞼の母(1962年製作の映画)
4.2
1930年に書かれた長谷川伸の戯曲「瞼の母」は、何度も映画化、ドラマ化されているスタンダードだ
今作は加藤泰のあふれるエモーションと、アクションに痺れる
まずはあらすじから


ーーーあらすじーーー
■番場の忠太郎(萬屋錦之介)と金町の半次郎(松方弘樹)が取っ組み合い、忠太郎は半次郎に対し国にはおっかさんも妹もいるんだから
堅気になれ、、というも、半次郎は、親分の恨みはらす、
ヤクザに親兄弟なんて関係ない!と飛び出していく
犬死はよせ!!忠太郎は結局加勢に入る
■茶屋での二人、、あにいの説教には負けたよ、
江戸におっかさんがいるかもしれない、忠太郎はおっかさんを探しに江戸に行く決意
■おぬい(中原ひとみ)のところに追っ手の飯岡の衆
お前の兄貴の半次郎が戻っているだろ!追っ手は半次郎に果たし状を残した
■半次郎の母は、息子に厳しい口調で堅気になれと
半次郎も堅気の決心で帰ってきたのだが、でも男だから行くしかねえ
そこに忠太郎が訪ねてきた、妹のおぬいは兄はいませんという
半次郎の母も、あなたは堅気の決心したところになんでくるのか!恨めしい、、
しかし半次郎はあにい!と後を追ってしまう。
忠太郎は身の上を語る、親なしっこ、5つの時に生き別れ、親の味って知らねえんです
■盆踊りの日、飯岡衆が忠太郎と半次郎を襲うが叩き斬り、手傷を負った飯岡衆は逃げていった。
忠太郎は、江戸に母を探しに向かう。母を想い、涙する忠太郎
半次郎の母は先程の忠太郎へのきつい言葉を謝罪し、しばらく半次郎を常陸に匿うことに。
■江戸、盲人の三味線ひきの物乞いの老婆、、お金を払わない男と揉めているところに忠太郎が通りかかる、歳のころはおっかさんぐらいか、、、
忠太郎が歳を聞くと、50になりまして、、
老婆は生き別れた我が子の名を幸太郎といった、人違いではあったが忠太郎は金を渡す
■飯岡の衆が忠太郎を追って江戸に入った。
忠太郎は細川邸の賭場に現れていた、飯岡から忠太郎を探すように頼まれた金五郎は賭場で張り込むために軍資金をせびりに、昔の知り合いおはま(木暮実千代)のところに
おはまは料亭水熊の女主人である。おはまは金五郎の無心を断る。そこに崩れた身なりの枯れ夜鷹が
金五郎が夜鷹を引っ叩いているとことに、忠太郎が助ける
夜鷹から、水熊の女将おはまには江州で生き別れた息子がいることを聞く。
水熊のおかみさん、、子供を残してきたって話だ、、
一方で金五郎はさっきの男が忠太郎だと知り、飯岡の衆に知らせに行く
■水熊の玄関で騒動になったが、忠太郎はおはまと対面する。
おかみさんは、あっしくらいの子供を??と聞く、江州の番場にいたことが判明、おっかさん!!感極まって涙😭する忠太郎
しかし、おはまは、うちの息子はもう亡くなったよと告げる
忠太郎爆泣き😭でそんなはずはない、おっかさんはクールに
あんたはあたしが産んだ忠太郎ではないよ、9つで死んだんだよ、あんたは銭もらいかい?
娘が嫁ぐって時に波風をたてにきたのかい、表も裏も見てきた私だ
忠太郎死んだと思い込んできたんだ、そんなにおっかさんを探しているならなんで堅気でいなかったんだい、
そこまで聞いた忠太郎、銭もらいでないことを証明しようと百両を見せるが
おはまは話を信じなかった。ついに観念したように大声で笑う
また旅鴉に戻るのか、もう金輪際きませんと言いながら忠太郎は飛び出してゆく
そこに帰宅した娘お登世は、今出ていった男の人は誰と母に聞くと母は泣いている、顔立ちが似ていたことから、兄さんねと気がついた
なぜ帰したの、おはまは娘に忠太郎を呼び戻しておくれ、、涙にくれる
■荒川堤の橋で金五郎と飯岡衆が待ち構えていた、忠太郎は飯岡の衆にてめえら親はあるか、子はあるかと聞き、ないと答えるとぶった斬った
飯岡を殲滅して隠れていると、おはまと娘達が探しにきた。
隠れる忠太郎、にいさ〜ん、忠太郎〜
忠太郎は木の影で泣き濡れている
離れてゆくおはま一行を見届けてから、忠太郎は反対方向に去ってゆくのであった
ーーあらすじ終わりーー


🎥🎥🎥
生き別れた母親を探す物語は、本作もスタンダードだし最近だと西川美和「すばらしき世界」でも同型の物語は見られる。
やはり母親の愛を知らず、それを求めるというのは人間の心を揺さぶるのだろう。
「すばらしき世界」では母親には会えない、「瞼の母」は会えることは会える。どちらも悲劇ではあるが仮に会ったとしてネグレクトな母だったりするとそれもまた悲劇であり、だったら会えない方がマシとも言える。
「瞼の母」のおはまは事情があり生き別れたがずっと忠次郎を忘れずにいるかなりいいおっかさんだ。
世の中には本当にネグレクト母がいるから

加藤泰の描く母と息子の物語は、かなりエモーショナルで激しい泣きが印象的であるが激しいアクションシーンも見どころである。
前半の半次郎と忠次郎が飯岡の衆をぶった斬るシーンでは、かなりリアリズム寄りでカメラも人物に近くてよく動くし、血も出るし相当迫力がある。
一方でラストの荒川橋での戦いは、カメラも引き気味で舞台を見ているかののようだ。
忠次郎が飯岡衆に「親はいるか、子はいるか」と聞くセリフもあり、心象風景を表すような殺陣の場面である。

なんといっても一番の見どころは、おはまと対面した忠次郎の泣き演技だろう。かなりの長い時間をここに割いており加藤泰の気合いを感じる。
ちょっと萬屋錦之介が泣きすぎるような気もするが、初めは銭もらいと疑っていたおはまが気がつく瞬間のエモーションはすごいものがある。気がついているのにそれを見せまいとする葛藤
おはまを中心にカメラが結構グルグル回ったりして、長い場面であるが飽きさせない。

永遠のスタンダードである

それにしても三味線弾きの老婆が80歳くらいかと思ったら50歳ということでびっくり、年下かい!
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