似太郎

瞼の母の似太郎のレビュー・感想・評価

瞼の母(1962年製作の映画)
4.3
男と女の行き違い、或いは情念とロマネスクの世界。これこそが東映時代劇、又は任侠映画に通底する一種の美学でもある。

『沓掛時次郎/遊侠一匹』と同じく長谷川伸原作で加藤泰監督の代表作の一本なのだが、公開当時は大した評価を得られなかったらしい。なんと当時、週刊朝日で萩昌弘という評論家が演出が安っぽいとかセットがちゃちいとかインスタント映画だとか言って本作をコケにしたのである。

加藤泰監督はそれに対して怒り、わざわざ映画芸術という雑誌で猛反論を起こしたらしいが。とにかく加藤泰は昔から誤解を招きやすい作風の監督であったことは確かである。私としてはとても立派な股旅映画の秀作だと思うのだが…?

劇中で宿命の女=ファム・ファタルを登場させた如何にも加藤泰らしい男と女の情念の世界が濃厚な、ローアングルと長回しがしつこい程印象に残る無常観と諦念に満ちた作。特に主演の萬屋錦之介は稀代の名演。幼少期に生き別れた主人公と母親との再会シーンはショッキングこの上ない。ラストも何だかやり切れない思いがする。

やはり加藤泰の作風はこの頃からアクが強く、陰湿なムードがある。しかしその独特な作風にハマると抜け出せなくなる「中毒性」が高いこともまた事実なのだ!🤔
似太郎

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