ふじこ

ロスト・キングスのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

ロスト・キングス(2020年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

息が詰まる展開ながら、泣きたくもなる。

年若い少年が家に帰って鍋に水を入れ棚を開けると食料が何もない。他の棚も確認してみるものの諦めて、テレビに夢中の弟にすぐ戻ると言って外へ。
近くのコンビニでそっと窃盗しようとするものの、声を掛けられて断念して逃げ出す。

自転車に乗って大きな家が立ち並ぶ通りを走っていると、急いで出かける為に鍵を分かり易いところに放り投げて車に乗って出ていく家族を見掛ける。
裏口に周り、そっとマットの下から鍵を取り出して中へ。保存棚や冷蔵庫から急いで沢山の食料をリュックに詰め込み、急いで出ようとするものの、広いリビングにピアノ、2階には沢山の服が吊り下げられてジュエリーボックスも置かれている。何を盗むでもなくそれらを眺めていると突然に母と娘が帰宅、2階へ上がってくる音がする。

なんとか隠れるものの、娘が閉めたはずの裏口が開いている と母に声を掛ける。
なんだか変じゃない…?と家を見回る母親。娘の部屋で小さな声で、誰かがここにいると思う と話すのを扉の隙間から聞いている少年。

1階に降りて、警察や夫に電話を掛けている横をすり抜けてピアノの下に隠れ、なんとか食料を詰めたカバンを持って立ち去る機会を伺っている。
窓のから覗くと家の外で警察と話す母親、そっと這いずって進むとヘッドセットをしながらゲームをしている弟、カバンが目の前にきたところで、娘がカバンの横で立ち尽くしてこちらを見ているのに遭遇してしまう。
お互い緊張した面持ちで硬直し、カバンを見て、少年は立ち上がりながら外を見る。
娘は何も言わないままそっとカバンを手に取り、差し出す。
それを手に取り走って外へ逃げ出す少年、それを尻目に荒い息を吐く娘。

今にも泣いてしまいそうな顔をして自転車を全速力で漕ぐ。


緊張のスニーキングアクションかと思わせておいて、見たことのない生活が珍しくて色々眺めたり、最後は何も言えずに飛び出してきて、自分の持たざる者としての惨めさや恥ずかしさで泣きそうになる少年がとても悲しい。
こんな事をしたくてしてる訳じゃないだろうに。
親の影がどこにもないのが不思議なんだけど、食べ物は確かになかったけど、そこまで家が荒れ果ててる様子もなかったような…。
軽い気持ちの範疇だったのなら、この惨めさで止めてくれる事を祈るし、もし本当に悲惨なお家なんだったとしたらいっそ行政が入った方が良いんじゃないかとも思う。
でも弟がいるからな…離れ離れになっちゃうのかな…。でもこのままなら何時かあの弟もこんな気分を味わうんだろうか…。
惨めさ、羞恥、後悔、なんかが出る内は救いがあると思う。
ふじこ

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