しゃりあ

君たちはどう生きるかのしゃりあのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.7
怪作すぎる

流石に円盤欲しくなった
冒頭大平(でしたね…訂正)作画やばすぎる
ホラー演出一生やるしずっとASMRみたいだったし黄泉の国巡りの話やるしこえーわ
高畑勲いるしこえーよ
脚本っつかフロムソフトウェア作ってるだろ
一番似てる映画、王ドロボウJING in seventh heaven
マグリット、デキリコ、ベックリン…と西洋絵画イメージ結構あった
これはこれで岡田斗司夫解説動画で死ぬほど稼ぐんだろうな

個人的な趣味で言っても出てくるイメージ群がツボではあるが、それを差し引いてもおもろかったと思う
最高

どうでもいいけど、ポスターの君生きくん、キメ顔盛りすぎだろ Tinder用の自撮りかよ

あと全体的にグロテスクすぎる
眞人が囚われてオウムのチョッパーシーンとか、嫁の妹と即デキ婚する親父とか
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前半(石で自分の頭を掻き割るところ)まで は今までのハヤオ通り写実的ディティールでやっている気がしていた

九四式軽装甲車の列とか、大沼(バスの表示)にありつつ駅名は鷺沼(に見える たぶん旧字体で逢沼とかなんだろうか…年代的には絶対にありえないが……)とかの整合性はわからんが…

青鷺が喋り始めてから、地獄めぐりを始めるまでの異界へ行くか行かないかのくだりは観ていてスリリングだし、演出的に面白さがずっとある

そして後半、つまり地獄めぐりを始めてからは、ハヤオの最終作になることに対してかなり自覚的な話になっているように思う

描写のディティールや、話の整合性、大筋の一性は全てオミットされていて、遺書的作品、集大成と呼ばれるような作品にならないように意図されているように思える

また、これは実はこういう話(例えば千と千尋の"風俗"的なまとめ方)に回収されないように、ワードサラダ的にプロットを組んでいるから、脚本を積むということをしない
塔とは何だったのか、という話に対して組まれるのは、本を読みすぎて大叔父が作ったモノ、外宇宙から飛来したモノ、と突拍子もない設定が次々と追加されていくことで意識的に空洞化させている

特に生きているモノとしてキャラクターを描き出す部分から離れている部分、ラピュタで言えばパズーとシータの物語、もののけで言えばアシタカとサンの物語にならないよう、徹底してキャラから離れている
夏子もヒミも母親であるが、ガワとしては眞人に関わるものの、青鷺やキミコと同列くらいのものとして描き、敢えて入れ込まない
それでいて破綻はしないように配置されている具合のバランスが良い

これは大文字の"君たちはどう生きるか"にならないよう、つまり眞人と母の物語に物語が閉じ込まないように意図されているように思う

美術面で言っても、今まで九份からエポックメイキングなイメージを叩き出していたようなジブリ作品に対して、西洋絵画的モチーフが散見されパッチワーク的に見えるし、ころころ雰囲気は変わる
その統一感のなさがありながらも、ひとつの世界観としてそれを力技でまとめ上げていて成立させているのは、上記のワードサラダ的世界観(ともすれば"夢"的)という部分で整合性を保っているからだと思う


つまり、語ら(れ/せ)たくない、一義的な作品にしたくない、ないない尽くしで出来ている話ではあるが、
描き出して焦点を結ぶ像よりも、描き出さないことによって描かれること、それによってできた影像の方を描くということを意識的にやっているのが好感が持てる