自分は「風立ちぬ」信者なので、そういう立場から極めて個人的な感想を書きたいと思います。
「風立ちぬ」を初めて見た時の衝撃やいい意味での裏切り、堀越二郎(庵野)の第一声のズコー感、そういうものは本作にはありません。
思っていたより普通の映画です。もう1回観に行きたい、と今は思っていませんが、多分観に行ってしまうんだと思います。
「風立ちぬ」公開は10年前。今の自分が「風立ちぬ」を初めて観てもそんなに感動できないでしょう。逆に、10年前に「君たちはどう生きるか」を観ても全然面白くないと思います。今の年齢(32才)で観れたことがよかった。そう思えるちょっぴり大人な映画です。
幼少の頃に観たナウシカ、ラピュタ、トトロ、紅の豚、魔女宅。少しだけ物分かりが良くなってから観たもののけ姫、千と千尋、ハウル、ポニョ。そして風立ちぬ。これまでの宮﨑駿監督作品のジブリ映画が走馬灯のように、いや、映画のフィルムのようにぼんやりと頭の片隅に浮かんでくる作品でした。
自分の中で圧倒的に特別な作品である「風立ちぬ」を、他の作品と同じように監督の作品の1つとして認識したのです。そして、「風立ちぬ」に熱狂していた自分を客観視することができました。あの頃は悪い意味で若かった。10年。短いようで長い年月です。10年間続いていた「風立ちぬ」の呪縛から解放されたような気分。お前が思ってるほど「風立ちぬ」は特別な作品じゃないぞ、早く楽になれ、いろんなもののいいところを見つけろ!自分の好きなものだけじゃなくて、他人が好きなものも理解しようとする姿勢で生きろ!(お前はどういう生き方を選ぶんだ!)
みたいなことを勝手に感じ、ラストシーンは泣いてしまいました。
宮﨑駿の映画を観たことがない人が本作を観たらどんな風に感じるのか。全く想像が付かない。でも、あと100年も経てばそんな人だらけになるでしょう。時代は変わる。宮﨑駿は変わらない。素晴らしい映画。前言撤回、また観に行きます。