まちゃん

君たちはどう生きるかのまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

事前情報がゼロというかつてない宣伝方法を取ったこの作品。もちろん個人的にもその状態で観るのは初めてだった。どのように展開していくのか全く予想のつかない緊張感。その鑑賞体験は実にスリリングで楽しめた。そして肝心の映画も良い意味で予測の付かない内容だった。おそらく遺作のつもりで撮った作品。かつジブリ単独出資で何も遠慮をしなくても良い環境。完全にリミッターを外した宮崎駿監督のイマジネーションに圧倒された。母親を空襲で失った少年・眞人が異世界に入り込む物語。ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」を思い出した。あるいは宮崎駿監督の内面への思索を考えるとフェデリコ・フェリーニ「8 1/2」かもしれない。子供が母親を失ったという現実を受け入れて新しい環境に適応する難しさ。異世界で次々に襲ってくる困難はそれを表現しているのだろう。火を操るヒミは母親の象徴であり、その助けは母親から受けた愛情が人生の支えになる事を表しているのではないか。ラストでヒミと別の扉に出る時の眞人の表情。永遠の別れの筈だが悲しみはない。そこには物語の最初とは違う成長した内面が現れている。様々な意味を込めた傑作。
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