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君たちはどう生きるかの盆栽のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.1
駿よ、俺たちはどう生きればいいんだ


引退宣言詐欺で有名な宮崎駿監督待望の最新作。前作『風立ちぬ』から10年後、今度こそ「最後」の作品になるかもしれません。ラストに相応しいような過去ジブリの総集編のようであり、「俺はこれで引退するけど、これからお前らはどう生きるんだ?」という駿監督の"遺言"のような作品。

お馴染みのジブリロゴが終わったあと、いきなり目に入ってくるのは「燃える東京」。バックからはサイレンの音が鳴り、今流れているのは戦時中だということに気付かされた直後にタイトルロゴ。第二次世界大戦を最後の時代背景にするのはいかにも駿監督らしい演出。ですが、この時代背景はただの付録で本当は『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』に似たファンタジーだということに少しずつ勘づき始めます。「そう!こういうジブリが久しぶりに観たかったんだよ!」という少年心が再度芽生え、気付けばスクリーンに釘付け。過去と現在、そして異世界を混ぜて混ぜ合わせた狂作ではありますが、ジブリ映画に必要とされているものが揃っていた気がします。

主人公の眞人が喋るアオサギに連れられてもう一つの世界に行くまでの前半は多少長さを感じましたが、ラストで感動したいなら全てが必要な映像だったのでしょう。中盤からは『天空の城ラピュタ』以来の"ボーイミーツガール"が発生し、これは駿監督の原点とも言ってもいい『未来少年コナン』に対するアンサーでもあるのかという感覚に。家族、友達、変えられぬ運命、自然破壊のメタファー。ありえないほどのメッセージ性が本作にはあり、最後にして駿監督は伝えたいこと、作りたいものを全力を使って表現したのだと思うと、改めて日本を代表する素晴らしいアニメーターなのだと気付きました。

本作でスタジオジブリは終焉を迎えてしまうのか、それもと誰かが受け継ぐのか。日本人である僕の意見から言うと、日本にはジブリがまだ必要です。君が最後の希望だ、宮崎吾郎!
君はどう生きるんだ。
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