あぶりかんぱち

君たちはどう生きるかのあぶりかんぱちのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

怪しい洋館、しわくちゃで愛着のあるお婆ちゃん、バターとジャムをたっぷり載せたパン、鬱蒼と生い茂る森、飛行機のパーツ、信念を持った少年・少女の目…

それら全編を通して『ジブリっぽい』と感じてしまうのは、既にジブリが色々なものを映画の中で描いてきたからだと思う。

そんな中でも今作で一際目立つのが「青サギ」をはじめとした生き物たちの躍動感。水面から飛び立つところから着地まで、細部の観察と丁寧な描写の賜物ともいうべき、見惚れるようなリアリティ。この地盤があるからこそ、オーバーにも思える表現が本当に起きているように思えてしまう。

スタジオジブリを見て育つと、他のアニメーションが描く動物の動きじゃ満足できなくなるの、つくづく贅沢な悩みだな…

総じて伝えたいことは、タイトルにもなっているように『どう生きるか』ということになるのだろうと思うけど、個人的には大きく2つに分かれていたように思えた。

ひとつはジブリにしちゃゆるキャラ路線に振り切ったな!と思えた白い生き物が出てきたパート。『どうやって生命が生まれるのか?』という問いに対する、ジブリなりの表現なんだろうな…と思った。
生命が生まれるために奪う命もある、生まれようとしていたのに死にゆく命もある、そんな奇跡の中で生まれてきた貴方はどう生きるか?というもの。

もうひとつは『人類』としてどう生きるのか?ということを問いかけられているパート。これは大叔父さんが出てきたくらいからかと。
数々の生命が積み上げてきた地球を"宙に浮かぶ石"と表現しているところ、その均衡を保つ白いブロックを「時間をかけて美しく積む」ことを求められているのに、インコの王が割り込みで入ってきた上に出鱈目に積んで壊してしまうところ。この辺りの表現に寓話っぽさを持たせながら「生き急ぐ人間」を描くのが職人の成せる技だなと。ちょっと強引な世界観のような気もするけど…笑

終盤、「…かがみの孤城?」と思える展開もあったけど、全体を通して見た時に、戦時中という時代設定の中でこれだけファンタジー要素を膨らませ、その中で現代の我々に生き方を問うてくるという、要素てんこ盛りな中で見事な造りの作品かと。

最後眞人がメガネを掛けてコペル君になるんかなぁ…と思ってたけどそうはならんかったか笑
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