Happa2001

君たちはどう生きるかのHappa2001のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0
そこに物語はほぼなく、イマジネーションしかない。しかもそれは全くこの世のものではない。全てのイマジネーションはここではないところ、我々の及びもつかないに場所に潜んでいる。創造者はその世界へとは入り込み、生と死を彷徨いながらそれを掴み、我々の世界へと引き摺り込んでゆく。そして、それがこの映画を作った男の生きる術だった。最後にその全てを曝け出した。さまざまなはじまりとおわりがこの映画には同居している。
前作が遺言なのだとしたら、本作は完全に彼岸へと飛び越えて行ってしまって、完全にあの世から送られてきたような、そんな感触がする。
少年は、奇妙で間の抜けたメフィストと共に死後、もしくは生前(どちらも同じ意味であろう)の、時間も場所も、現実にある何もかもを超越するようなイマジネーションに溢れた世界を旅する。彼が生み出してきた数々の動きやモチーフの変奏があちこちで湧き起こる様は感慨深くも楽しい。その最果てにて、少年は(そしてスクリーンを目にしている我々も)老人に世界を託される。物語上でも、主人公が自分を産む前の母親に出会うという形で表されている時間の捩れはメタ的な段階でも発生している。彼の生の終着点は、その始発点でもあったということ。この凄まじい円環をもって、ある一人の人間による、生の軌跡、地獄のイマジネーションの旅は終わりを告げる、のだろうか。
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