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君たちはどう生きるかのslowのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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最近、最寄りにあった最後のレンタルショップが閉店してしまった。いくつかあった行き着けの中でも、一番長く利用したお店だった。年明けに閉店セールがあって参加して来たのだけれど、店内は大勢のお客さんで賑わっていて、言葉にはしないものの、皆同じ気持ちを共有する戦友のような連帯感の中、買い物を楽しんでいるように見えた。店内を一通り回って精算のために列に並ぶと、前方に並ばれていた年配の男性が目に入る。胸にはお孫さんへのプレゼントだろうか、ジブリ作品を数枚抱えている。またアニメコーナーにはたくさんの小さい子供たちがいて、棚とにらめっこしている姿がある。アニメは子供たちが物語という概念を知るのに、絵本に次いで身近な教材になり得ると思うし、宮崎駿のアニメも多くの人々の人生に影響を与えてきたであろうことは間違いない。とりわけ長編アニメ映画というジャンルを娯楽の枠に留めず、世界的に裾野を広げて来たという功績は計り知れない。ただ、ここにいる全ての人たちが、そんな風にかしこまり、回りくどいことを考えているわけじゃない。この地方の小さな町の1人にまでそれが届き、泣いたり笑ったりできる。それでいい。なぜこのようなことをここに書いたのか。店内で見たあの光景が当たり前にある世界線で生きていられるという幸福は、こうやって時々、映画の余韻に入り混じる。本作が宮崎駿の引退作となる可能性は大いにあるし、そのような作品にも思えた。あの時言葉にしなかった気持ち。寂しさと感謝の気持ち。それをここで言葉にしたくなった、そういうこと。
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