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君たちはどう生きるかのSUGO6のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.0
宮崎さんの最後の作品として初日に鑑賞。
公開日に映画館で見るジブリ作品としては初めてとなるのもあり非常にわくわくした。正直ジブリ作品(特に宮崎さん監督作品としては)として見れば好きな類の作品とは言い難いのが事実。(前提として評価数字はあくまで作品そのものに対しての個人の評価であるので、宮崎監督やスタジオ自体への敬意や感謝を反映している訳ではない)

宮崎さん監督ジブリ作品の中では、初期の風の谷、ラピュタ、ととろ、もののけ姫など、シンプルなストーリーにわかりやすい心情描写のある作品が自分としては好みだ。(米林さん監督だがアリエッティも好き)そうした作品に比べると本作はよりハウルの動く城などの登場人物の精神世界をファンタジーライクに描く複雑性の高い作品に思われた。ハウルを鑑賞した際にも思ったが、様々登場する描写に対して必然性、理由を求めてしまいがちになり(その理由がすんなり見出せない感じに多々直面したのを記憶しているが)、本作で描かれる塔に入り込んでからの表現に関しても、同じような感覚を覚えてしまったし、ストーリとして面白いかと言われるとなかなか厳しいのではとも思う。

とはいえ当然ながら好きな部分もある。まずもって登場する数多の色とりどりかつ個性的な鳥のキャラクターたちや、生命の元となる愛らしい出で立ちのキャラクター(名前忘れてしまったが、トトロのまっくろくろすけやもののけ姫のこだま的なキャラ)など魅力的なキャラ描写にはわくわくしたし、(本作が特別なのかかわからないが)水彩画タッチの風景の中をキャラクターが行き来する印象的な描写、意図的かはわからないが過去作を想起させるいくつかの描写(ex. ナウシカの飛行機の操縦部分を覆う白いシールドの様な描写)にも、最後の作品だからこそなのか宮崎さんの思いや遊び心を感じることができた。

鑑賞前は原作(小説・漫画)をベースにストーリーを組み立てられるのかと思っていたが、蓋を開けたら全くの別物で、「君たちはどう生きるか」という作品自体については、本作の作中に実際の書籍として登場させるにとどめられていた。にもかかわらず本作をオリジナルのタイトルにせず、原作のタイトルを使用されたのは、作中でこの書籍に出会い真人少年が涙するように(原作の肝のメッセージとなる)自分自身が感じることを恐れず表現して行くことの大切さに、宮崎さんご自身がこの本を通じて気が付かれたからなのではないかと思ったりした。

本作の中で宮崎さんがご自身を重ねたキャラクターは上述の真人少年自身でもあるのだろう。塔の主が発したメッセージは、宮崎さんご自身のご子息であり、ジブリの監督・アニメーターとして未来を継承していく吾郎氏へのメッセージとしても感じられたし、分派していったスタジオポノックへのもの、更にはこれからの時代を生きる全ての人たちへのメッセージとも受け取られるように思えた。それこそ総クリエーター社会に対して、(ご自身がそうされてきたように)表現することを恐れるな、とでも言うかのように。

今作はストーリーとしては難解なものとなっているが、ある種それは、最後の最後に宮崎さんご自身が自身の過去を振り返り、観衆でなくご自身のための作品として表現したいことを好きに表現したという感じがする。(それ故の一社単独出資なのかなと)それを最後の最後にこうした規模で無事に着地させれたことに、本当に感謝したい。

私たちはどのようにして、私たちなりの積み木をまた組み上げていくべきなのだろうか。アニメーターとして最後まで生き様を見せてくださった宮崎さんの残してくださったものを噛み締めて生きていきたいものだ。
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