ちゃんゆい

君たちはどう生きるかのちゃんゆいのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

世界の均衡と人間たちの選択の物語。
もしも、どこかに世界の均衡を司る塔(空から降ってきたもの、鳥たちもその象徴)があって、この世のバランスを保つため(石のつみき)の選択をしている人間がいたとしたら。

重層的な世界観の中で、筋を見失わないように適切なタイミングで「この世」の描写を挟むのが流石だった。
夢と現実、どちらとも判断がつかず鑑賞者に委ねる繋ぎ方が、物語の没入力を増す。

汚れていない石を積む。世界の均衡が1日、保たれる。
3日に一度積めば、均衡は保たれるはずだった。
石は崩れ、戦争は始まった。

眞人(まひと)は、石はつみ"木"ではないことを見抜く、純粋な眼差しの持ち主。
直前に読んでいた『君たちはどう生きるか』の影響もあってかもしれない。
そして母もきっとそうだった。炎のような心で、生まれてくる子供たちを守る。

異なる時間(もしくは世界)の人物たちが、塔のなかで均衡を守っていた。
それぞれの世界へ、ドアを開けるところがとても良かった。

世界の均衡をなぜ日本で?というのは、塔がそこに落ちてきたから、という点で辻褄を合わせている。

世界的な戦争が起こったのは、塔の中でこんなことが起こっていたから。

人間の純粋な眼差しが、悪によって崩されてしまった。

母の火事は、塔の中で均衡が崩れた瞬間とリンクしているんだろう。

なつこの導かれての塔内の出産は、均衡を選択する継承者を生まされようとしていた?
そしてそれを妨害するのは禁忌だった。眞人は知らなかったため、禁忌を犯す。
インコはそれを逆手に、ひめを人質として塔の世界を奪う交渉を図る。

父は戦闘機を作り、戦争の状態をむしろ喜ぶ、悪に染まりかけた眼差しだったため、塔に入ることも見つけることもできなかった。

インコは何の象徴なんだろう。悪?自然?
これから生まれようとする子供を食べ、石には目もくれず、(というか、その価値や意味を見つめようともせず)自分本位に石を崩す。

「君たちはどう生きるか」
まさにこのタイトル通りの物語。
ある時に、世界の均衡は崩れてしまった。眞人はどんな選択をしたか。
均衡を保つ石を見抜き、選択しようとした眞人。そして、役目を継ぐよりも、母の妹・なつこを助けることを一心に考え、その純粋な行動を貫こうとした。
しかし、その寸前、悪(インコの王)がそれを身勝手に崩してしまう。

わたしたちだったら、どんな選択をしたか。
そして、これから、私たちはどんな選択をするか。

世界の均衡が再びおかしくなってきたいま、
宮崎駿が未来へ託すにふさわしい物語。