このレビューはネタバレを含みます
母親が死んでしまうことは変わらない。変えないのが宮崎駿の「生命」への誠実さかと。死んだものは生き返らない。でも、事実を再解釈することはできる。というより、人間はそうやって現実と向き合うしかない。火を味方につけている若い母を見た少年は母の死を再解釈できたのではないか。
少年はいつかあの世界で起こったことを忘れてしまうだろう。それに、あの世界は矛盾だらけで、崩壊しかけていて、おまけに不健全だった。
それでも、魚を捌いて血まみれになったあの時、バターとジャムを塗りすぎた食パンにかぶりついたあの時、ペリカンの最期を見届け埋めるために穴を掘ったあの時、その時その時で彼が抱いた感情は全部大切で、本物で。例え出来事は忘れても、感情は彼の中の大切な部分に残り続けると思う。
不健全な世界から抜け出したペリカンやインコは美しい。あの美しいシーンでも、人の体に糞を落としまくってて、宮崎駿、思想貫き通してんなぁと思った。