フジマークス

君たちはどう生きるかのフジマークスのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

初見2023年7月18日
シネマイクスピアリにて

2回目2023年8月20日
福津にて

若い時分に観れて良かった。
そう思えるだけで、この作品を十分に楽しめていたと思う。
僕たちはみな宮崎駿の子供。

眞人の部屋の窓にアオサギが入り込んでくるシーン。アオサギは、眞人の心の中にあった母の死に対する悲しみを言葉にして発してしまう。眞人はそれに「シッシッ」と言って、窓を閉めようとする。アオサギの存在を新しい母から隠そうとしているように見えた。眞人にとって母親の死は、生きてくうえでの悲しみとしてとても大きいもので、ここではまだ乗り越えられていない。
眞人の悲しみを言葉にしてしまうアオサギを、眞人は仕留めようと立ち向かうが、アオサギを簡単に倒すことはできない。
さらに眞人はアオサギに母親が生きていると言われ、アオサギの導くままに森の屋敷へと進んでいく。その後の冒険活劇は、母の死と向き合い乗り越えるための行為でもあり、自分の身の危険を顧みず新しい母親を救うための行動でもある。
後者は、『千と千尋〜』でハクを救うために片道切符をもって銭婆の元へ行く千尋の振る舞いと「人のために危険をおかして行動する」という点が似ている。
アオサギの導きの後に眞人が訪れる場所や状況は、物語において統一性をもって構成されていないが、そこでの眞人の振る舞いは「君たちはどう生きるか」の問いに対する答えそのものであり、それこそが本作にとって重要な部分のように思えた。
描かれた物語世界は、観客が娯楽として没入するための説明が行われず、宮崎駿の考えの中においてのみ統一性が保たれているように思える。
そして、眞人がどこに向かうにも1人じゃないというところに勇気をもらえた。ヒミ、キリコ、アオサギの存在が友達となり、眞人がその後現実を生きる上で極めて重要なものとして語られている。

3度目、2023年9月27日、Tジョイ博多にて

『失われた者たちの本』の物語をなぞりながら、それぞれのシーンは、宮崎駿の個人的な語りが行われる。
アオサギは、眞人を大叔父の元へと導くために現れているという状況をはじめ、『失われた〜』を踏まえると物語展開をとてもわかりやすくのみこめる。
終盤、眞人が大叔父が行ってきたことを継いでいくかという状況にて、争いや憎しみのない穏やかな世界をつくるよりも、元いる世界で悲しみを踏まえ、友達を作って生きていくという語りが行われる。このような形で、現実との関わりのある語りが行われる作品は好き。
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