無何有郷

君たちはどう生きるかの無何有郷のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0
警報が映った最初のカット、私、意外と原作に沿って昔トトロなんかよりやりたかった文芸『火垂るの墓』をここに来てやるのか?と思いかけた。が、疎開して屋敷に入った時には既に様子がおかしくなり、7人の小人みたいなおばーちゃんが出てきて、千と千尋をもっと明るくしたホラー映画調からのノンストップの「超」ファンタジー展開。「超」=否定なので、初めてジブリ飯が不味そう。そして最後に自らそれを崩壊させる。ラピュタのように、もののけ姫のように、最後にはここまで自分の作ってきたファンタジーランド丸ごと全て壊して石ひとつだけ持って帰ってあっけなく終わってしまう。

『君たちはどう生きるか』が父親の不在だったところを「母の喪失」に転換しちゃうあたり1番はやっぱりマザコン映画だと思うんだけど、それより何より「石」が気になりすぎる。とにかく、黒沢の『夢』やキューブリックの『アイズワイドショット』みたいにならず、最後に良いもの観せてくれたと思う。81歳でこの創造力・想像力は凄いし、こんなものをシレッと劇場公開して席が埋まる凄さよ。
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