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君たちはどう生きるかのspitfireのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

少年が死んだ母親の影を追う冥界行。一応は少年の冒険であり商業作品としての体裁は成しているものの、イマジネーションの赴くまま広がる世界にこれといった説明はなくて、アートフィルム的というか夢を見ているかのようでした。個人的には「マッドゴッド」と通ずるものを感じました。あちらも晩年の巨匠が自らの趣味性をフルオープンにした地獄巡りでしたものね。

少年期の監督みたいなのと老境の監督みたいなのがそれぞれ出てきて、冥界の未来を若者に託そうとするも断られ、冥界は崩壊してしまう。現世に帰ってめでたしめでたしなんて雰囲気にはあんまりならず、濃密な世界が滅んでしまったことへの寂しさが募ります。自伝的な映画としてメタ読み出来そうなんですが、今はまだそうした読み解きをしたくありません。どうにも作品から神秘性を剥ぎ取るような行為に思えるからです。もう暫くドープな余韻に浸っていたいのですが、如何でしょう。

ただ、母親が好き過ぎるあまり2つの人格に分裂させたのはエグい性癖の迸りを感じますね。枯れてるように見えて、実はまだまだ元気なんじゃないかな監督。

ジブリ単独出資とはいえ、事前情報をほぼ全てクローズでパンフもなしというのは、流石に思い切りが良すぎたような気もします。映画館などなど作品を届ける側のステークホルダーが難儀してそうで、ちょっと酷なんじゃ……。
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