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君たちはどう生きるかのRISAのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.5
― 奪い合い、殺し合う世界へ戻りたいのか。

宮崎駿監督が引退宣言をされた
2013年”風立ちぬ”から10年後の今年。

公開前の宣伝活動は一切なく、
作品の情報もあのポスターのみと
(鈴木敏夫プロデューサー曰く、
映画スラムダンクの成功を見て
今回の宣伝プランにしたそう)
情報だらけのこの時代だからこそ
想像力を掻き立てられる
新たな宣伝方法からして
この作品に対する期待値が高くて。

率直に言うとすごくよかった!!

上映後の映画館やコメントでも
内容が難しいとか、
メッセージがよくわからないとか
マイナスな意見も多く聞くけど
個人的にはキャラクターの心情を慮ると
グサグサきてしまう場面も多かったし、
作品に込められたメッセージは
きっと見る人によって様々だと思うけど
私は温かい勇気や明るい希望のように
感じてすごく温かい気持ちになったな〜
(とはいえ私も物語や作品の
メッセージを全ては理解しきれて
いないかもしれないけどね笑)

加えてジブリ作品を観たことのある人は
過去の作品を感じさせるような要素が
随所に散りばめられていて、
にやにやわくわくしてしまったな〜笑
(キャラクターや建物、火に水に、、ね。)

ここからは、
少し物語の内容に触れていくけど、、、



本当は色々な要素を取り上げて
ひとつひとつ思い返しながら
話していきたいけど笑
ネタバレになってしまうので、
かいつまんで印象的だった点だけ。

まずは作品のポスターともなった
あの青鷺の存在ね。
スクリーンに登場したときから、
明らかに物語のキーとなるであろう
青鷺の正体が気になって仕方なかったし、
少しずつその正体に近づいていくに連れて
気持ちが高まっていく感じは
子供の頃のような溢れる想像力と
探究心をもって魅入ってしまっていて。

そして現実とファンタジーの世界の
曖昧で絶妙なラインが素晴らしいなと。
(これはジブリ作品のほとんどに
言える事だと思うんだけどね)

幼くして、奪われ、与えられる
生きづらさを覚える過酷な現実と
雲のようなどこまでも掴みきれない
ファンタジーの世界。
本作で描かれるこの2つの世界の
繋がりこそがジブリらしいな〜と。

でもって何より本作で印象的だったのは
序盤のあの彼女の選択と
終盤のあの少年の選択。

ここからネタバレになってしまうと思うけど。





まずあの彼女の下した、
「出産をする世界の選択」は
同じ女性としてグサグサきてしまって。
というのもあのときの彼女の心境って
愛する人の子供が傷ついてしまうような
辛く苦しい現実の世界よりも
お姉さんが側にいて穏やかに安心できる
あの世界で出産したいという思い
だったのかな〜なんて考えてしまって。

加えて、あの少年が迷うことなく下した
「自分がいるべき世界の選択」は
私達大人からするとなかなか真似できる
ことではないのかななんて。
(映画館で見ていたときは
まだ現実の辛さや生きづらさなんかを
味わっていないから、
ただ現実に戻りたいと強く願ったのかな
と思ったんだけど今思えばあの少年も
多くを奪われていた訳で、、
その恨み辛みみたいなものは
世の中のせいにはしていない証拠でも
あったのかもしれないな〜。)

ただ「天気の子」を
観たときにも感じたんだけど
“少年の下す決断”って
もし30代、40代の中年の頃に
同じように選択に迫られたとしたら、
きっと違う選択をするだろうなって。

年齢を重ねて経験を重ねていくにつれて
大切なものの優先順位って
変わっていくものだと思うから、
“愛と世界”って重く大きいものを
天秤にかけた時の傾きは同じ人でも
少年と中年って選択するときの年齢に
よって変わってしまうのかなって。
(もちろん人にもよるとは思うけどね)

私自身もきっと中学生くらいまでなら
あの少年と同じ決断をしたと思うけど
今なら違う決断をしてしまうと思うし。

ただ、現実でも違う世界でも
生きる選択は自分次第な訳だから、
生きるってこと自体には
世界なんてきっと関係なくて、、
自分の意志次第で世界はいくらでも
変えられるだろうから、
大切なのは自分の意志なんだよね〜

そんなメッセージを受け取った今、
私はこれからどう生きるか
難解なテーマに悩まされてしまうな笑
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