カルダモン

君たちはどう生きるかのカルダモンのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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「観てきたよ」というと「どう?面白かった?」と聞かれる。面白いか面白くないか、と問われれば面白いのだと思う。が、返答に窮する。私が面白いと思う部分は大体において意味がわからないシーンばかりで説明のしようがないからだ。

例えば、
小さくて白いワラワラとかいう無数の生命体が天に昇り、ワラワラからさらに生命が誕生するその刹那、ペリカンの大群がワラワラを一網打尽に食い荒らす地獄絵図、そこへ主人公の母親が若かりし頃の姿となって神の如くに現れ、天空に向けて打ち上げ花火を口から発射、火の粉を被ったペリカンは焼き尽くされ、ついでにワラワラも巻き添えで丸焼けになってああ無情。という場面(記憶違いがあるかも)。
言語化してもまったく意味がわからないが胸を打たれた。が、面白さを伝えられる自信はない。加えてネタバレ厳禁ムードが漂っているということもあり「うん、面白かったよ!意味わかんなかったけど」というバカ丸出しand面倒臭さ全開の感想しか出てこず、嫌になる。


物語としては宮崎駿版アリスインワンダーランドな構造で、穴を抜けた先のカオスと現実が交差する。彼自身の少年時代がベースにあって、父と母との関係や生まれ育った環境、戦中に体験した恐怖、不安、絶望などが渾然一体となって幻出し、トラウマの如き過去の心象を救済していく、ということなのだろうが、あまりその辺りを重視してみておらず、インコ軍団のキマッた顔がキモイイ!とか別のところに気を取られていた。親子の歪んだ関係が気色悪くて、なんだかそのあたりに庵野秀明と重なる部分を感じて、本質を曝け出すとキモさが立ち上がってくるなあというところも面白かった。居心地は悪いし好きじゃないけど、ポニョ以降は宮崎駿の持ってるキモさを臆面もなく表現してるので、確実にそこは見どころのひとつかなと思う。私としては狂った映像表現をもっと見たかったのだが、後半の崩壊していく展開からの着地が早すぎてあと一歩の不完全燃焼。もっと客を突き放してくれたら大林宣彦級のショックを受けられたかも、と思うとやや残念な気持ちもした。