真一

君たちはどう生きるかの真一のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
2.3
 あまりに意味不明で、独創性に欠けた駄作。面白くなかった―。こう書くべきかどうか少し迷ったが、書くことにした。「この映画が無名の監督が撮った作品だったとしても、心から面白かったと言えるだろうか」と自問した。答えは「NO」だ。

 某映画評論家が本作品を「面白いと感じられる映画。アートとして見るべきだ」とユーチューブで評価していた。これは「宮崎駿の作品は傑作に決まっている」という前提で発している言葉ではないか。無名の監督作品でも、同じことが言えるだろうか。恐らく、言えないと思う。

 作品は「風立ちぬ」と「千と千尋の神隠し」を混ぜ合わせ、そこに「ハウルの動く城」を取り込み、さらに「トトロ」と「もののけ姫」の風味を加えた印象。オリジナリティは感じられない。ストーリーは難解と言うより、そもそも脈絡がないようだ。宮崎駿さん自身が「私自身、訳が分からないところがありました」とコメントしているのだから、脈絡は本当にないのだろう。

 今回の作品は予告が一切なかったため、これまでの作品にも増して世間の関心は高まった。確か、民放もニュースで「ベールに包まれた神秘のアニメ作品」などと紹介していた。株式会社「スタジオジブリ」の「無予告」という話題づくりが奏功したわけだ。さーすが商売上手!ジブリ側は、一切の先入観を排し、作品を堪能してほしいからだと説明しているようだが、額面通りには受け取れない。私たち観客が「監督はあの宮崎駿だ。感動の名作に決まっている」という圧倒的な先入観を持ってスクリーンを見据えるという事実を、ジブリは熟知しているからだ。

 「宮崎駿が監督だから、感動作に決まっている」という先入観の上に「予告なしということは、恐らく空前の自信作に違いない」という期待感を抱き、自腹でチケットを買って大画面を凝視する―。こんなシチュエーションに置かれれば、意味不明のものを見せられても「よく分からなかったが、傑作だったいう感じはした。いや、間違いなく傑作だった」という思いに駆られるというものだ。自分自身も、映画館を出たときは、少なからずそんな気がした。でも帰宅した後、ジブリの洗脳工作から目が覚めた。「面白くないものは、やはり面白くない」と気付いた。
 
 「たとえ無名の監督の作品であったとしても、本作品は間違いなく名作だ」と感じる人は、本当にこの映画を楽しめたのだと思うし、その良さを体感したのだと思う。自分は残念ながら、その境地に達しませんでした。付け加えると、映像は、いつも通りに美しかったです。

追記

 偉い坊さんが「南無阿弥陀仏」とお経を読むと、意味が分からなくても「ありがたい」と思うのが「信仰」。そう考えると、宮崎駿は坊さんで、本作品は「南無阿弥陀仏」そのものだ。ジブリ教、健在です。
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