ゆりな

君たちはどう生きるかのゆりなのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.7
宮崎駿版「不思議の国のアリス」であり、今の頭の中をドッキングしたような作品。

最高だった!面白い!って言っているお友達の感想を、(その人の人となり知ってるから)人柄込みで知りたいよ。

私、単純に宮崎駿の死生観が合わないんだと思う。
自分が死後の世界や黄泉の国みたいなのを信じず、メキシコ人監督が好きだったり、逆に北欧の自然に還る無が好きだったり、それらに惹かれる身としては好みが違う。
思えば、駿が好きな児童文学はイギリスやアメリカが多いもんねぇ。

宮崎駿の物語の軸になっているのが「戦争」。
冒頭の戦時シーンは迫力と怖さがあり、主観的に描かれているのが印象的。

からのお屋敷に引っ越してくるのは夏らしく、ジブリは本当に夏が似合うなぁ〜と。最初のお屋敷や田舎での疎外感や孤独、私も都会生まれなので、すごく分かるんだよね。
主人公・眞人は全然喋らないどころか、嫌なことがあるときに口元が😖この形になるのが切なかった。

アオサギの正体は?消えてしまった大叔父様?なんていうミステリ&夏らしい前半に比べ、アオサギが正体を現してくる当たりの後半からグッと変わる。
アオサギのキャラクターもゾワっと気持ち悪いところが多い。けど思えば「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」も、気味が悪いシーンあるもんね。

んで、たくさんの解説を探したのですが、やはりストーリーがどうとかではなく「宮崎駿の今の頭の中」を見る作品なのだなと。

また、主題歌が米津なのが、今時の売れている人使ってきたな……と思いきや4年前から決まっていたらしい。
すごいや。何かの作品の2次創作(という名の書き下ろし)させたら右に出る人いないですからね、米津。

たくさんのアニメや映画を生み出して来た宮崎駿が「次の世代に託す」=そのうちの一人が例えばだけど、米津だったんだろうな。

ただ駿だけじゃなく自分もだけど、誰もが自分の頭の中を鏡のように作品に投影したら、観客側への説明を省きたいだろうし、省いたらこうなるだろうな。

以下ネタバレ


・13個の積み木の意味が、監督した作品数と知り鳥肌

・3年以内に子供が産まれている、お母さんの妹と?近親相姦みたいで気持ち悪いとの評もあるが、そうではなく「お母さんと似ている人」を選ぶと必然と妹だったんだろうな。
ヒミを出して、別れさせるためには、お母さんが現代では死んでいる必要があるし

・最後に「段々忘れていく」とアオサギが言い、その通り忘れていきそうな描写で、数年後にパタンと扉が閉まり大屋敷の自室を出ていくシーンは、夏の終わりと駿作品の終わりを感じた。
私は「紅の豚」「風立ちぬ」あたりのハードボイルド系が好きだから、まだまだ駿に撮っていてほしいよね

P.S.

8.11にやっと発売された公式パンフレットを読みました。
本当は「風立ちぬ」の後に、制作の想いがあったこと。
昔は映画を作るのに年1でできたこと。歳を取って3年かかるようになったこと。そして今回も3年と思いきや7年かかり、途中で「死んでもおかしくない」と思いながら進めたこと。

作画が変わったとの話は、変わったというか、もう自分が描ける体力が恐らくないこと。

仮に今新作にまたトライしていたとしても、次は10年後かもしれないので、ぜひ映画館でどうぞ。
ゆりな

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