ジェイコブ

君たちはどう生きるかのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

スタジオジブリ最新作。

戦時下の日本。入院中の母を火事で亡くした少年の眞人。戦争が始まるにつれて、軍需工場を経営する父と共に母の妹で継母の夏子の屋敷に移る。戦争の恩恵を受け、戦時下にも関わらず裕福に暮らす眞人だったが、母の死後周りの人に対して心を閉ざしており、家や学校でも居心地の悪さを感じていた。ある日学校で喧嘩した帰り道、石で頭を傷つけた眞人は、屋敷の周りを彷徨く青鷺の声が聞こえるようになる。青鷺に導かれるようにして、屋敷の敷地内にある閉ざされた塔を訪れた眞人は、そこで火事で亡くなったはずの母の姿を見る……。
風立ちぬで引退を表明した宮崎駿が10年の時を経て発表した最新作。万人に受け入れられるような作品の代表といっても過言ではないこれまでのジブリ作品とは異なり、評価が真っ二つに割れる事でも話題の本作。
内容的にはこれまでのジブリ作品を部分部分で踏襲したように思える点も散見するが、それでも本作を難解たらしめている最大の要因は「大叔父」の存在だろう。なぜ彼はあの世界を統べる存在となったのか? あの塔はどこからやってきた? キリコが恐れていた墓の主の存在とは? など様々な謎が最後まで明かされていない。ただ一つ言えるのは、あの世界では人より鳥は強いということだろう。インコ軍団も可愛げと狂気が紙一重でまた良い笑。また、現実世界ではタバコ中毒の偏屈婆さんだったキリコが、落ちた先の世界では頼りがいのある姉御みたいな存在になってるのは最早ジブリ版なろう系だろう笑。
本作のストーリーは「白雪姫」から引用しているというのは、お手伝い婆さん7人衆が7人の小人と重なるも見て取れる。考えてみれば最後インコと触れ合う夏子の姿は白雪姫のそれとも重なる。
輪廻転生の象徴であるホロホロが大量死したのは、当時の戦争により、生まれてくるはずの命が途絶えた事の表れで、ホロホロを食べるペリカンは人間が自らの罪によって受ける災いであり、因果応報のメタファーだろう。
宮崎駿が引退から10年という節目に本作を公開した背景として、環境破壊に戦争、蔓延する疫病に人間を凌駕するAIの登場など、この10年で大きく世界が動いた事が理由として挙げられるだろう。混迷を極めていくこれからを生きる子供達に何かメッセージを届けたい思いが強く出たと思われる。
かつて愛弟子だった庵野秀明はエヴァを終わらせ、実写作品を精力的に生み出し続けている。宮崎駿は彼の活躍を目の当たりにして、もしかしたら身体の動く限りまだやってみたい気持ちを芽生えさせてもいるのかもと個人的には予想している(もしそうであれば熱い展開だが笑)