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君たちはどう生きるかのbibooのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

生きる意味なんか考えたくないし、てか意味なんかないのに、なんでこんなに一生懸命に生きてしまうんだろうと思う。生まれてしまったから、愛してしまったから、情が芽生えてしまったからだろうか。
ただ、お腹の中でオタマジャクシの時にいくつもの困難を乗り越えて勝ち抜いて生まれたから、多分とてつもなく何らかのラッキーがある気はしている。わらわらを見てそんなことを思った。

「君たちはどう生きるか」というかなり考えさせられそうなタイトルだった割に、宮崎駿による「生きる」という表現がまっすぐすぎて、どんどん社会に余裕がなくなっている今聞くと綺麗事にも聞こえてしまった。だからといって、この作品を斜めに見るのは、自分の心が薄汚れすぎている気もする。見終わった後、劇中で感じたまっすぐさを心から失いたくないというような思いに駆られて、とにかく雑念を入れないようにして帰った。
はたから見ると不器用と言われるかもしれないけど、余計なことを考えずに雑念に負けない人こそが本当に強い人だと思う。表層的でおめでたい愚か者になりたくないし、なるべく研ぎ澄まされて生きていきたい。眞人のまっすぐさを見てるとそう思ってしまう。
そんな風に意志と信念を考えてしまうから、自分もどんどん眞人のように強くてまっすぐな目になっていってしまっている気がする。

偏屈な日本社会で生きていると、劇中の「豊かで平和な世界を作ってくれ」っていう大叔父の言葉に全然ピンとこない。無謀でファンタジーの極みに聞こえる。でもそれと対照に、できることをやってかなきゃいけんようなまっすぐな気持ちにもさせられた。選挙投票に行こう。

あと夏子の女っぽさがすごい。見た目だけじゃなくて声と所作一つ一つに“女”がにじんでいて、子供の時にあんな人に出会ったら絶対逃げ出したくなると思う。最初、眞人の母になろうという気持ちが全然見えなくて、父の女という雰囲気がすごかったし、眞人の顔を撫でたシーンは母性ではなくて“女”すぎてゾッとした。そんな夏子と父親が2人だけのシーンは、男女のただならぬ感じを見てしまったような感覚になる。
それでも眞人は子として新しい母を受け入れるんだけど、豹変した夏子の強い言葉に傷つきながらも支えようとしていて、やっぱり親よりも子供の方がある意味大人なんだなと思ったりした。よく「親からの無償の愛」なんて言ったりするけど、無償の愛を注いでいるのは子供の方なのにと思う。もちろん愛情深い親もいるんだろうけど、怒鳴られてもなじられても捨てられても信じてしまうし嫌いになれないし認めてもらいたいのは子供の方だよなとそんなことを考えた。
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