エイデン

君たちはどう生きるかのエイデンのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

昭和18年(1943年)
激化する太平洋戦争下の東京に住む少年 眞人は、ある夜 空襲警報によって目を覚ます
慌ただしく家を飛び出していく軍需工場経営者の父 正一から、母 久子の入院する病院で火事が起きたと聞かされる
急ぎ後を追った眞人だったが時既に遅く、病院は完全に炎に呑まれ、久子は帰らぬ人となってしまうのだった
それから時は経ち、正一は久子の妹であるナツコと再婚、眞人は母方の実家へと疎開する
既に正一の子を妊娠しているナツコはどこか母の面影を宿していたものの、未だ母の死から立ち直れていない眞人は素っ気ない態度を取っていた
屋敷に到着した眞人は、ナツコが覗き屋と呼ぶ大きなアオサギに何故か執拗に狙われるも、屋敷に使えるばあや達と挨拶を交わし自室へと案内される
いつしか眠ってしまった眞人は炎に包まれる母の夢を見て思わず涙を流す
しばらくして、辺りを散策していた眞人は、あのアオサギが離れにある洋館の塔へと入っていくのを発見
土で埋められた入口から中へと入ろうと試みた眞人だったが、探しに来たばあや達に止められてしまう
あの塔が気になった眞人は、その晩ナツコに疑問をぶつける
ナツコによれば、あの塔は大叔父が建てたもので、彼は頭は良かったが本の読みすぎで頭がおかしくなったと言われていた
その後 塔の中で大叔父は姿を消してしまい、塔の地下に巨大な迷路があることからナツコの父親が危険だと入り口を埋め立てたらしく、眞人も中へは入らないよう忠告を受ける
後日 眞人は転校した学校に登校するが、クラスメイトからは都会者と揶揄され上手く馴染めず、大喧嘩を起こしてしまう
傷だらけになった眞人は、石を使って自分の頭を殴りつけ、血を流しながら帰宅
眞人は心配するナツコや、学校に物申すと意気込む正一には喧嘩の事実を隠し、転けただけだと説明するのだった
その後 治療を受けた眞人が自室で眠っていると、部屋にアオサギがやって来る
木刀を持ってその跡を追った眞人だったが、アオサギに木刀をへし折られてしまう
更にアオサギは口を利き、母親は死んでおらず眞人を待っていると怪しげに告げる
その言葉をきっかけにして辺りの魚やカエルが一斉に眞人の身体を包み込んだその時、彼は自室で目を覚ます
しかし眞人にはそれが夢だとは思えず、木刀も触った途端に崩れるように壊れてしまうのだった
そうした間にも、つわりに苦しむナツコは、しきりに眞人の顔が見たいとこぼしており、眞人は彼女の部屋へと向かうが、素っ気ない態度を取ってしまう
頭の中はアオサギのことでいっぱいだった眞人は、ナツコの部屋で盗んだタバコを報酬に使用人達の協力を得て、弓矢を自作する
落ちていたアオサギの羽を使い弓矢を完成させた眞人は、ふと森の中へと歩いていくナツコの姿を見かけるが、特に気に留めることは無かった
そんな折 母が自分のために残した小説『君たちはどう生きるか』を発見した眞人は、それを夢中で読み涙を流す
その夜 ナツコが自室から消えていたことが明らかになり、屋敷の中は大変な騒動となっていた
ナツコがアオサギにたぶらかされたのではないかと直感した眞人は、使用人の1人キリコを連れ、弓矢を手に森の中へと向かう
やがて洋館にたどり着いた2人は、アオサギに中へと誘われ、眠っている久子を見せられる
ところがそれは偽物で、怒った眞人はアオサギに弓矢を放つ
使われていた羽が弱点であったことから、くちばしを射抜かれたアオサギは半分人間の姿へと変貌、鳥の姿へ戻れなくなる
続けてナツコの行方を尋ねると、そこへ塔の主人が現れ、眞人とキリコは不可思議な“下の世界”へと迷い込んでしまう



吉野源三郎による同名小説を元にしたスタジオジブリ製作のアニメーション映画

ストーリーやキャストを含め一切の宣伝活動を行わず、謎のポスター1枚で勝負した作品
事前の情報としては『君たちはどう生きるか』を元にした冒険活劇という訳わからんものになっているけど、概ねその通り
というかどの辺に影響があるのかもよくわからないレベルなので原作の履修も特に必要無い
ただ未来への希望を示し、タイトル通りの問い掛けを後進たる鑑賞者に投げかけるテーマ性みたいなものは継承されているかな

肝心のストーリーというと、戦時下を舞台に母を失い、居場所を失った眞人が下の世界を冒険するというもの
辛く馴染めない現実からファンタジーの世界へ行き冒険する
そんなありがちな青春冒険モノの形を取ってるけど、そこはジブリらしい独特の世界観で面白い
ただここが賛否分かれるところで、その世界についての説明がほぼほぼ廃されてる
結局あの世界が何なのか、伏線っぽい情報がどう繋がるのかも明確に提示されず、そればかりかストーリーの軸に当たる部分さえ観客に解釈を委ねているという
主人公の眞人も心情明かすタイプではないので、何のために何をしてるのかがとにかく見えにくい
訳がわからないみたいな感想が乱立するのもその辺りが大きいかな

そうした解釈のヒントは作中に散りばめられてるのが常だけど、それが作品外にあるというのがまた混乱を招くところ
というのも(これもまた賛否はありそうだけど)個人的にはやはり監督・脚本を務めた宮崎駿の物語というメタ構造になってるように感じた
父親の職業が同じような感じだったりと類似点の多い少年時代から、空想(フィクション)の世界への羽ばたきと、それを踏まえて生の意味を見出していく姿勢
またその空想の世界を維持しているのもまた自分自身なのかとか、意味付けも何となく見えて来る...かも
空想たるファンタジー部分も、過去作っぽい要素が散りばめられてるので、ますますそういうことっぽい...かな

そうした背景やメタ的な側面も見てる人のが肯定的な評価を下してる印象は強い
ただまあ個人的にはそれを踏まえても、もう少しやりようはあったような気もする
一方でプロモーションから何から野心的とも言える作品であるのは確かだし、眞人くんのラストの選択含め、アニメーター宮崎駿からの(最後だからこその)セルフ批判&若者への『君たちはどう生きるか』というメッセージにも取れるのは力強い
ジブリ的な絵の面白さに引っ張られながらしっかり観られる作品になってるので、気になる人は観ましょう
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