ウンコロリ

君たちはどう生きるかのウンコロリのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
2.2

このレビューはネタバレを含みます

主人公とヒミがインコたちに囚われて以降、映画のリアリティラインが虚構側へとさらに傾いた印象があり、カオス感を一層高めている気がした。
囚われたあとは、主人公の手枷は青サギのぶんまわした棍棒?で簡単に壊されるし、インコ大王が木の橋だか骨組みだかを壊して落下しても主人公は瓦礫の下から無傷で出てくるし。窓ガラスは簡単に蹴破れるし。
同じ異世界パートでも前半の魚の腹をさばこうと刃物に力いれる場面とか、テーブルの下に頭をぶつけるとか描写が細やかだったのに。
それともあれは世界を作ったのが大叔父だから主人公特権みたいのが付与されてたってことかな。

難解であることを肯定的にとらえる意見も多いけど、作り手が意図していなかったであろう不可解な点もいくつかあり、例えば
・青サギと主人公、なんで仲良くなったか分からん
・青サギは嘘つき、みたいな会話あったけど、全編とおして嘘つきキャラじゃなくね?
・↑と近い場面だったと思うが青サギの羽根が千切れたら死ぬ?みたいなくだり、コミカルなやりとりらしいけどクスリともしなかったぞ
・てか主人公やそれ以外のキャラがみんな何考えてるのか分からん。千と千尋も終盤はそんな風だったけど前半でキチンと豚になった親に驚いたりしてくれていたおかげで、主人公に共感しながら異世界を冒険できたけど。今作も青サギが人語を話したら「鳥が喋った!」みたいに驚いてくれないと困るよ。鳥が言葉を話してんのに何でシッシッって追い払おうとしたり「罠ですよ、罠」とか言うのですか。それとも屋敷のおばあさん達は青サギが何やら只者じゃないって知っているってこと?とか混乱したよ。

↑このへんは、13個の積み木みたいな評価対象になりうる難解さとは切り分けてきちんと欠点だと指摘せねばならんと思います。老いによる衰えですかねやっぱり。

人を食べて増えすぎたインコは大叔父が連れてきたわけだがその目的とか、同じように連れてこられたペリカンがここは地獄じゃ、とか嘆いたりしているあたりは魅力的な謎といえるけど。

あと主人公を異世界へ向かわせる動機が、①夏子さん捜索。②実母と会う。 の2つがほぼ同時に提示されるのも、どっちの気持ちで主人公が動いてんのかよく分からんかったな。

最後、青サギはあばよ、みたいなこと言って去っていったけど、どこに帰ったんだろね。あの異世界は崩壊したし。普通にただの青サギとして主人公の近辺に暮らしてたのかな。主人公と少女版カーチャンの別れの場面もそうだったけど感傷に溺れずアッサリしてますな。その割にどっかでの再会シーンで少女版カーチャンが主人公に抱きついて泣いてたり、そんな絆芽生えてたっけ?みたいなチグハグさも自分は老いによる衰えと判断します。こういうのはハウルあたりから顕著だけど。

あと冒頭の母親の死因も火事と空襲、2つの意見が上がってるけど、B29は飛んでいないし、病院以外は燃えていなかったはず。火事が原因かと思えるが、ファーストカットのサイレンは空襲を想起させるし(火事であんなサイレンなるんですかね?)、空襲で亡くなったという印象を意図的につけようとしていた気がする。
個人的には主人公の母親の死因は、息子との冒険を経て現実に戻った母親が主人公を産んだあと、なんかのはずみで現実世界で火の魔法が発動したせいで焼け死んだ、と思っている。
宮崎駿は幼い頃、誰かの運転する車か何かに乗って空襲から逃げていたことを覚えており、その際に助けを求める人を無視して逃げたことが忘れられないと半藤一利との対談本で話していた。
そんな負い目のある宮崎駿には、戦争という災禍で亡くなる人をストレートに描くことはできなかったのではないか。
だから空襲による犠牲、と思わせるような描き方をしつつ、でも自身への言い訳としてほんとは自分の魔法に起因する死でした、としたのでは。とかちょっと思ったり。
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