むぎちゃ

君たちはどう生きるかのむぎちゃのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画公開後に公式が発表したキャスト陣と主題歌しか知らない状態で鑑賞出来たのは幸運だった。(願わくばそれらの情報すら事前に知りたくなかったが)
と言うのも、Xなんかで見かけるネタバレpostはもちろんのこと、ネタバレに気をつけてるつもりのpostにも実はネタバレが多分に含まれているからだ。皆様もお気を付け下さい...マジで。


さて、前情報なし×ジブリ作品という組み合わせの最大の武器は、リアル路線なのかファンタジー路線なのかが、事が起こるまで分からないところだな。
それがアオサギが喋りだしてもなお、母親を亡くして精神が澱んでいる少年の妄想によるものなのではないかと。
どちらかと見極めようとスクリーンに前のめりにさせる魅力を生み出していた。
後になってあの女中のおばあちゃん達の異形さが伏線になってたと。マヒトらとは明らかにキャラデザが異なってるのも、異世界からの転入者であれば納得。


で、蓋を開けてみると異世界ファンタジーにくわえ、まさかのタイムパラドクスなSF要素を織り込んだ構造だと…?
弓矢を手に館へと足を踏み入れた辺りからの展開はかなり興奮した。「どうなる?どうなる!?どう転ぶ!?!?」と、まさに前述の通りのリアクション。あれこそ「映画体験」って感じがした。

ただ、その後の異世界の描写が何とも...。
あの世界が石を積んだ「石の世界」なのか、マヒトが呼んでいたように「海の世界」なのか、鳥が埋めつくす「鳥の世界」なのかが結構漫然としてた印象。
魔法というか非現実な世界観な以上、ルール無用な何でもありの展開になるのでドキドキ感はかなり薄れた。

特に目立つのが「ただの台詞」。
「ここでは私の力は弱まる」とか「大いなる石よ~」とか、ただ口で言ってるだけじゃん。
観客がそれを自然と受け入れられるような映像表現が欠け過ぎな印象。
米を噛んで糊にして矢尻をこさえるあの細やかな描写は何処へやら。


アオサギが屋根を歩く足はもののけ姫?
ナツコを探す為にくぐり抜けた草木のトンネルはとなりのトトロ?
その先の森ももののけ姫?
石はそのままラピュタ?
大叔父様が鳥王子を待つシーンは紅の豚?
...と、まぁあまりジブリ詳しくない私にも見て取れるくらいにセルフオマージュが随所に見られたが、きっと気付かなかったとこも多いんだろうな。
ただこの辺はあくまでおまけ要素?今までのジブリ作品にはない演出だと思うが。
駿作品となると「セルフオマージュをする意味」みたいな所まで勘ぐってしまうが…キリがねぇのでリタイア。


君たちはどう生きるか
人間は善い心も悪しき心も混在する。自分の頭を石で切り裂く事すら厭わない。
不純物のない世界なんて永遠ではない。積み上げた石のようにいずれ崩れるのだ。
そんな醜くも美しい世界を選んだマヒトのように、この世界で生きる我々にも「私たちはこの世界でどう生きていくべきなのか?」を自問自答させる役割がある映画...かもしれない。

...違うかもしれない。
むぎちゃ

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