なお

君たちはどう生きるかのなおのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

「作品ビジュアル以外の事前情報を一切告知しない」
というセンセーショナルな”宣伝”手法で、この夏の映画市場の話題をかっさらった感のある本作。
公開から約1カ月ほど遅れての鑑賞。

幸い悪質なネタバレに出くわすことなく鑑賞当日を迎えることができ、この日は地元・仙台の映画館へ。

『風立ちぬ』以来10年ぶりに長編映画のメガホンを取った宮崎駿監督作品とのことだが、奇しくも自分が最後にちゃんと見たジブリ作品もこの『風立ちぬ』だった。

「傑作」「何が何だかわからん」と世間の評価は真っ二つ。
ジブリを映画館で見るのはもう十何年ぶりだろう。
それなりに大きい期待感を抱え、朝イチ上映回へと消えていったのだが…

✏️年に数回出くわす「感想を書くのが億劫になる映画」
自分はほぼ100%と言っていいくらい「何が何だかわからん」派でした。
そしてひさびさに「感想を書くのが億劫になる映画」に出会った。

これを見たのが夏休み前半も前半、8月の11日で、このレビューを書いてるのが8月の23日、実に12日も間が空いた。
「どう感想書いたらいいかわからん」という葛藤と、夏休み中に気管支炎にかかってしまい体調が壊滅状態。
完全にレビューを塩漬けにしてしまっていた。

まずなんだけど…
これってわざわざ「戦時中」を舞台にする必要性ってあったんだろうか。

「君たちはどう生きるか」というタイトル、そして映画冒頭に描かれる凄惨な火事のシーン、そして母を失う主人公・眞人。
この火事の一連のシーンの描き方はさすが宮崎監督、といったスゴ味があった。

「日本の夏」
夏の甲子園、夏休み、花火大会…といった楽しいイベントが盛りだくさんな感じがするけれど、日本が近代国家となって初めて、外国との戦争に負けた季節でもある。

この「夏」という季節にわざわざ宮崎監督が10年ぶりにメガホンを取り、「戦争」を題材にした作品を手がけたということは。
『火垂るの墓』とはまた違った視点で戦争の悲惨さや儚さといったものを切り取るのか。
これはもしや名作の予感───と思ったんだけれど。

その後は何やら『猫の恩返し』を彷彿とさせる、しゃべる動物たちが活躍するファンタジー作品へとシフト。

ほほうここでファンタジーか!
と最初の数十分はジブリ特有の世界観とアニメーションを大画面で素直に楽しむことができたけれど、途中から抽象的だったり説明的な会話シーンが増え始め、眞人と青サギのワクワクドキドキ冒険譚とはちょっと違う感じに。
朝イチ上映回だったこともあり、中盤あたりの眠気がマジでしんどかった。

途中途中、何やら観客への「メッセージ」とも取れるそれっぽいセリフやアイテム類は多く登場するが、恐らくそれらを全て回収して咀嚼するまでには複数回の鑑賞が必要だろう。
よほど自分で考えたいという人でない限り、既に有志が開設してくれている考察サイトのお世話になった方が早い。

唯一わかりやすかったのは「積み木」かな…
崩れそうになっているのは「戦争が行われ今にも崩壊しそうな世界」を表しているのでは。
そしてこれから積み木を重ね新しい世界を構築していくのは、まだ若い眞人のような存在であると…

それにしても、ただその「積み木」の描写のために「戦時中」という時代設定を持ち出してくるのはあまりに短絡的、メッセージ性が薄すぎるとも思う。
自分が気づいていない他の描写やセリフに「戦時中」という設定をわざわざ持ってきた意味が込められていると信じたい。

あとは眞人も劇中に読んでいた「君たちはどう生きるか」の原作本を読んでおくべきだったかなぁと…
大昔に漫画版は読んだことがあるのだけれど、内容なんてほとんど覚えていなく。

その点では、こちらの準備不足もあってこの評価に落ち着いてしまった面もあるかもしれない。

☑️まとめ
あまり良い面での感想を書けなかったけれど、およそ10年前に「引退宣言」をした宮崎監督作品をまたスクリーン上で、リアルタイムで拝めたのは素直に嬉しかった。

また本作には、「スタジオジブリの血を引く」とも称される「スタジオポノック」のメンバーが一部「制作協力」という形で本作の制作に関わっている。

スタジオポノックがいったいどのシーンの作画などを手がけたのかは定かではないが、少なくとも自分の目には「これまで見てきたジブリの世界」が広がっていて、「制作技術やジブリ・スピリッツの継承」みたいなものはたしかに行われているんだろうな…とも思った。

事実、今冬にはスタジオポノックが手がける新作『屋根裏のラジャー』が公開される。
自分は今のところ見に行くつもりはないけれど、気になる方はぜひ。

<作品スコア>
😂笑 い:★★★☆☆
😲驚 き:★★★★☆
🥲感 動:★★★☆☆
📖物 語:★★★★☆
🏃‍♂️テンポ:★★☆☆☆

🎬2023年鑑賞数:80(37)
※カッコ内は劇場鑑賞数
なお

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