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君たちはどう生きるかのHIROのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.7
映画を観てから一晩寝かせて、自分なりに考察したのでメモ。

「君たちはどう生きるか」という問いかけは、映像制作者へのメッセージである。と感じた。

ひいてはエンタメコンテンツ制作者、その産業全体への警笛とも言えるメッセージに思えた。

大叔父は宮崎駿監督自身を投影したキャラクターであって、眞人は今後を担う制作者を投影しているのではないか。

13個の積み木は宮崎駿監督が手がけたアニメ映画の本数に相当することから、大叔父は宮崎駿自身であるという解釈は当てはまるだろう。

その前提で、映画の場面、フレーズに隠された意図を考えてみると、

最近の映画やエンタメコンテンツは構想期間が短く、”深みのないものばかりが世の中に蔓延している”ことへの嘆きが、映画の場面やフレーズから読み取れるように思う。

別の表現で言い換えると、表面的で瞬間的な面白さや、儲かる仕組みの構築が優先されて、人の心に残る作品を作る(作れる)制作者減ってしまったことへの嘆きだと感じた。

実際に、最近の映画や本、ゲームの内容は、全くもって浅く、受け手のウケばかりを気にして、制作者の思想や想いがないコンテンツが蔓延している。
ビシネスとしてはそちらの方が儲かることは理解できるが、芸術の観点からはそう言った作品はとても退屈なものだと感じざるを得ないのが今の日本のエンタメ産業だと思う。

また、それによって”コンテンツを享受する受け手側の感受性や心の豊かさ”も無くなってしまっていることへの哀れみを表現しているように感じられた。

本作品が告知や宣伝活動をほとんどせず、内容自体もどこか掴みどころがない仕上がりになっていることも、上述した”受け手側の感受性や心の豊かさ”というものを取り戻してほしいという意図が込められているのではないか。

上述したことは、見当違いかもしれないし、そのほかに伝えたい他の側面ももちろんあると思うが、これが私の感じた本作品の一側面の考察である。

せっかく掴みどころのない作品を作ってくれたのだから、この作品を観た方たちにはぜひ自分の感受性を広げて、心豊かに自分なりの考察をしてもらいたいと思った。
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