七沖

君たちはどう生きるかの七沖のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.7
映画を観ることって、宝箱を開ける感じに似ていると思う。
宝箱の装飾がすごく凝っていたり綺麗だと、中には何が入っているんだろう期待してしまう。反対に、質素な宝箱こそ、実は本物という可能性もある。

今回の映画体験は、まさにこの宝箱を開ける気分だった。

事前情報がまったくなく、ここまで内容が分からない状態で映画を観たのは、映画というコンテンツに初めて触れた幼少期ぶりの体験だった。
幼い時は俳優や監督の名前も何も知らなく、次に何が起きるのかを胸を高鳴らせながら画面をじっと見つめていた。
それに近い体験ができたというだけで、この映画を観てよかったなと思う。
DVDリリースされる頃にはネタバレが出回っていると思うので、劇場公開している今しか味わえない、まさに映画館ならではの経験だ。
IMAXとか4DXとか応援上映とか、今では付加価値をつけるための様々な鑑賞方式があるが、「前情報を一切入れない」というすごくシンプルな方法でも、映画館ならではの体験ってできるものなんだな、ということに気づかされた。

冒頭は圧巻。
なんと表現したらいいのだろう…あの、ジブリ走りとでも言ったらいいのか、あのヌルヌルと躍動感にあふれた走り方がたまらない。
あのシーンを劇場で観れただけでも、個人的には元がとれたと思っている。

ストーリー全体を通してみると、ちょっと物語の立ち上がりが遅いようにも感じたが、全体的には充分楽しめた。
「あのキャラはジブリのあの人のことでは…」とか深読みできそうな話で、ついつい鑑賞後の考察に熱が入ってしまうのがなんだか悔しい(笑)

「宣伝しない」という宣伝方法といい、すべては日本アニメの一時代を築いた宮崎駿監督のネームバリューがあるからこそできることだなと思う。
観賞中はずっと、蓋を開けるまで中身が分からない宝箱を前にしたような気分で、童心に帰ったような気分にさせてもらえた。
宮崎駿監督からの、最後の素敵な贈り物だった。










宝箱の中身は……そこそこだった。
七沖

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