moon

君たちはどう生きるかのmoonのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.1
宮崎監督の作品は、風の谷のナウシカから数作品を除いて大体観てきた。
でも、「千と千尋の神隠し」以降 好きな作品と巡り会えてない。同じジブリなら違う監督の【おもひでぽろぽろ】【思い出のマーニー】は好きだった。

十年ぶりという宮崎監督の新作という事で、多分、映画ファンはどんな作品か不安と期待が入り混じった気持ちで不思議な「トリ」(よく見ると目が二重に?付いている? !!)を見て、アレコレ思いを巡らしただろう。もちろん、私も。
このビジュアルはかなり早い段階で発表されていた。のに、その後続報は全く通知されず、鈴木プロヂューサーから、あえて宣伝は打たない…との話が公開一月前?にあったのみ…そして、ベストセラー【君たちはどう生きるか】のアニメ化ではない事も。(映画の中で真人が読んでいるが)

その秘密主義ゆえ、私の周りのジブリファン達も、内容が分からなくては怖くて観にいけないとの声多数。当然だろう。夏休みを見込んで沢山の映画が公開される中、お金と時間(124分)をかけて観るのだ。後悔したくない!!
観るなら納得してから観たい。

しかし、日本にはジブリなら絶対に観たい!!という、熱烈なファンが多いのだろう。公開されて3日間の興行収入は19億円!!とロケットスタートを切った!!

しかし、声優の役者が公表されたとはいえ、宣伝動画もパンフ(1ヶ月後8/11に発売)さえ無いまま。内容はレビューで知るのみ。

う~ン💦
ちらっと点数だけでも見ると微妙。見てみ゙たいような、怖いような…
でも、レビュー友から「見て良かった」とのご感想を頂き、やっと40日を経て 観てみた。

ストーリーの流れは、意味が解らなかったり、登場人物達の心の奥底の気持ちが摑み切れなかった。行動原理というか動機がイマイチ解らないまま、眼の前に展開される 異次元世界を真人(まひと)と共に体験してゆく…感じ。

これまで、好きな宮崎作品は、とにかく背景描写がとても繊細で美しいところ!が魅力!!
その強烈な造形美は一度観たら、いつまでも、目に、心に 焼付いて離れないくらいの印象を残していた!

ナウシカの腐海の巨大な虫が泳ぐ様やオームの群れが動く様、オームの目、巨神兵の恐ろしさ、金色ので野…などなど。

トトロの大きなケヤキが月夜にグングン大きくなって行く様や、夏の田園風景、雲と夕立、猫バスを待つ停留所、夕焼、などなど。

魔女の宅急便での、ヨーロッパの町並み、パン屋の倉庫の2階の住処の心地よさ、空からの風景の爽快さ、などなど。

ラピュタでは、深い鉱山の描写、ロボット兵のキュートさ、天空の城ラピュタの奇想天外な(堀に水が湛えられている)造形美。飛行石が宿る大きな石と植物に囲まれた空間 それらが破壊されていく様、ラストシーンの優しさなどなど。

もののけ姫では、もう、どこかしこにも画像が素晴らしい!!山にかかる雲、 シシ神の森の風景、こだま、月夜に現れるデイダラボッチの神々しさ、シシ神、池、山犬の住処となる巨石、ラストに緑に覆われるタタラ場…などなど…。

千と千尋では、こちらも、色彩的にも構図的にも、絶賛したい!!空の青さ(セルリアンブルー)は日本では無い異世界を感じさせ、町並みや湯屋の造形美は和風とも中華風とも ともかく異世界なのだ。極彩色の模様やあらゆるモチーフが同じ画面に賑々しく登場するのに、その画面が全く壊れない!!うるさくない!
むしろ、何処迄も美しい!!湯婆婆丿部屋!!驚嘆した!
それだけでない。カオナシと乗って行く電車の海中線路を走る風景の見事さよ!
そして、銭婆のヨーロピアンな可愛い住まいの安堵感。
異世界への入口出口となった不思議な駅のような空間などなど。


どれもストーリーが好きというより、その卓越した世界観の描写に 何度も浸りたくなる私だ。


[以下 ネタバレ⚠️注意]








今回の映画を観ていて、一番感じたのは、私達観客は、宮崎駿監督の 頭の中に、まだまだ溢れんばかりに有る異空間、世界を次から次へと見せられている。ということ。ストーリーは二の次?で、宮崎監督の描きたい世界を好きなように描いたのではないか?と 思った。

だから、青サギが何で真人のもとに来たとか、大叔父さんが何を託したかったのかとか 考えなくても、いいやと。(メッセージが何なのか理解出来なかった💦)

が、しかし、私が過去作で感嘆し、強烈なインパクトを受けたような、鮮烈なオリジナル描写が、あまり見受けられなくて寂しかった。(こだまのようなモノも登場したが、こだまほどの可愛らしさも感じられず)
次から次へと場面が進んで行き、じっくりその世界観を心に留める時間が与えられなかった。
終わってから振り返ると、ハッキリ思い出すのは気持ち悪いインコの群れと、オヤジ顔の青サギ、真人が初めてバルコニーから眺めた庭の形良く刈られた針葉樹に月光が差して行く様の美しさ(このシーンはハッとする程綺麗だった) 、大叔父の居所への薄黄色の洋風な柱の有る空間、と大叔父の頭上に浮かぶ巨大な石……宮崎監督のお好きな洋館の佇まい…だけだった。今回の映像は以前と比べて やや繊細さが乏しい気がした。
もう何回か観たら、印象に残る名場面を発見出来るだろうか?

もし、誰かに誘われたら観に行っても、いい。その人の感想が知りたい…
多分、一人で劇場ではもう観ないだろう。

そして、宮崎駿監督には、多分、もっとIMAGEする世界観が まだ沢山お有りだと思った。今作では、まだ本当に描きたいモノを出し切れなかった気がする。
もし出来るなら ストーリーなど無くても良いから、その頭の中の世界を吐き出して映像化したら良いのに。と思った…

真人が読んで泣いていた「君たちはどう生きるか」の゙内容は映画では示されなかった。宮崎監督はその著書を映画を観た人々に読んで欲しくて この映画を作ったのだろうか?
もし、そうなら それは成功してるかもしれない。かなり売れているとのことだ。
私は…?読まないかも💦


米津玄師さんの主題歌「地球儀」はとても素敵だった。
moon

moon