るるびっち

君たちはどう生きるかのるるびっちのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0
お母さん好きなんだな・・・
とっても母体回帰的な内容だった。
色んな女性に世話ばかりされるが、 最終的にはお母さんに世話されたいのだな。

前半、主人公は自傷して嘘をつく。
名前は眞人だが、真人間ではない。
だが母の遺品から、『君たちはどう生きるか』の本を見つけ、それを読んで真人間になる。
だから後半は、ほぼ必要ない。
ファンタジーの向こうの世界で冒険を経て真人間になるのではなく、 読書体験で真人間に生まれ変わっているのだ。
向こうの世界で体験する必要は特にないのだけれども、
夏子さんを救い老婆を救い、最後はお母さんを救いだすけれども、あの世界は救わない。世界を継ぐことを拒み、現実に戻って自分の世界を作ろうとする。

後半のイメージは雀百まで踊り忘れずで、 宮崎さんが若い時に影響を受けた『雪の女王』や『やぶにらみの暴君』(現『王と鳥』)のモチーフに溢れている。
結局、若い時に憧れたものをそのまま最後まで墓場まで持って行くんだな・・・と何だか微笑ましく、鳥たちの放埓も楽しく見られた。
宮崎さんの人生を振り返ると同時に、中学生の頃から夢中になっていた宮崎アニメを共に歩んだことを振り返り、祝祭気分になっていたのだ。
今までありがとう、という気持ちで楽しく見られた。

82歳の宮﨑駿の本作を、若い宮崎駿が観て影響を受ける様を妄想した。
それはクリエイターからクリエイターに渡されるバトン。
本作を見たクリエイターの卵たちが、次はどんな影響を受けてどんな世界を作るのか。
過去の世界を作るのではなく、自分たちの世界をそれぞれのクリエイターが創っていくのだろう。
そして今回、作画は人に任せたということで、 新しい方式を採用しているらしい。眞人が石を持ち帰ったように、新しいものをこれからも創るのかなと感じた。
引退ではなく、82にしてもっとというメッセージか。
宮﨑から宮崎へ。
宮﨑さん万歳!!
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