三体艦隊

君たちはどう生きるかの三体艦隊のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ジブリを全作みているわけではないが、ジブリ作品は2つの世界が舞台になることが多いように思う。

もののけ姫・・・たたら場ー森
トトロ・・・村ー森
魔女の宅急便・・・街ー魔法
千と千尋の神隠し・・・現実ー油屋

そして、アウトサイダーとしての異世界側の冒険を経ることで、一皮剥けた大人になるという成長譚が多くみられる。

最初は現実ー異世界の対立構造であったものが、成長を経ることで現実ー異世界が実は密接な相互補完関係にあり、より大きな目でみれば一つの秩序になっていることがわかる。

そして、今回の「君たちはどう生きるか」だが、異世界がみえなくなるのではなく、異世界が崩壊していた。

これまでは、異世界と相互に支え合う現実をみてきたのに、今作品では、異世界などもはや存在しない現実をみせられた。

ペリカンが「地獄だ」と語る異世界を少しずつでもよくしようとする大叔父の丁寧な仕事が、不完全な世界ながらも一応はそこで権力を持ち、良い方向への変化すら恐れるインコ大王にあっという間に壊されてしまった。

戦争という地獄の世界の中で、戦争ゆえに権力を保ち続ける主人公の父とインコ大王が重なった。主人公の父は戦争など終わってほしくないだろう。決して悪人ではない父やインコ大王のような人物にいとも簡単に壊されてしまう世界。壊されることが運命づけられている世界で、どう生きるか?という話なのだろうか。
考えが浅すぎることは自覚しています。

しかし、母が焼けて死ぬことが運命づけられていることがわかっていても、なおも生きる選択をする。
異世界などもはやなく、破壊が運命づけられている、剥き出しの世界でどう生きるのか?と問われているような気がした。

美少女の登場が極端に少なく、醜い青鷺をメインに置いていることも興味深い。このせいで、エンタメ性は大きく損なわれていると思うが、日本人の美少女趣味と敗戦というテーマは密接に結びつく(会田誠氏の「性と芸術」を参照されたい)。

宮崎駿作品の功罪両面ある存在としての美少女からの脱却?は、何を訴えかけてきているのだろうか。
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