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君たちはどう生きるかのjellyfishのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.6
今、見に行こうかどうか迷ってる方へ
あらかじめストーリーや登場人物を把握してから見ましょう
なんなら、いろんな方の解説を読んでからでもいいと思います
この作品が語られるとき「何も知らずに見るべき!」という声が多々ありますが、そんなことは無いです。
ある程度、見る前の土台があった方がすっと物語が入ってきます。

あとは、普段ジブリをあまり見ない方、特に好きなジブリ作品が無い方、みんなジブリ好きって言うけどそんなに面白いかな…と思ってる方、見ない方がいいと思います。
監督の集大成を感じる作品なので、随所に過去作のオマージュが出てきます。
ジブリ好きなら「今のシーンあの作品に似てる!」と言う楽しみ方ができるのですが、ジブリ作品に興味が無い方は本当につまらないと思います笑

さて、私はそこそこジブリ好きです。
一通りのジブリ作品は見ています。
そんな私がこの映画を見て感じたのは、「監督の贖罪」です。
以下ネタバレします!



眞人=幼少期の宮崎駿
実際のお母様も病弱で駿少年が看病していたが、早くに亡くなってしまった
宮崎家は戦時中、戦闘機の部品を作っていた
この前提で書きます。

救えなかった母、戦争に加担していた家
これが監督の罪悪感だと思います。
この2つを昇華するためにこの作品を作った

「私はこれから君を産むんだろう?最高じゃないか!」
母の命を救えなかった自分なんかがのうのうと生きていていいんだろうか?と言う苦悩に対して、少女時代の母であるヒミが「そんな君でいいんだよ」と肯定するシーン
これは、実際に監督がお母様から言って欲しかった言葉なんじゃないでしょうか?

(大叔父から見たら)純粋な眞人にこの世界の均衡を保つ役割を引き継いで欲しいと大叔父に言われるが拒否するシーン
大叔父曰く、戦争や争いの無い世界を眞人はつくれるらしい
しかし、眞人はそれを拒否する。
自分は純粋でも正義の人でもないからと(傷に触れながら)
眞人がどういった理由で傷を付けたのか作中では明かされていないが、傷を付けた後の行動は明示されている。
そう、嘘をついた。
親に嘘をつくような自分はその役割にふさわしくないと眞人は思った。
そして、世界の清い均衡は崩れさった
現実世界ではますます戦争が激化していく。
そう、まるで眞人が拒否したせいで、戦火が広がったようにも見える。
これが、監督の2つ目の罪悪感
自分は無意識に戦争に加担していたのではないか?
本当は戦争をしない選択もできたのに、誤った道を選んでしまったのではないか?
この罪悪感に答えるために監督は、たとえ戦争に加担していようとも人は「生きていい」(いや、「生きねば」)
「どう生きるかが大事なんだ」とこの作品を通して伝えているのではないかと思いました。

マンガ版ナウシカのラストもそうですが、予定調和で清廉潔白な未来を拒否し、争いが絶えず人々が憎しみあう今を生きる私達をそれでもいいんだと肯定してきた監督らしい作品だと思いました。

眞人に投影した幼少期の自分自身を肯定すると共に、監督は眞人と同じような子供たちにも祝福を送っています。
生まれながらに破壊が進む自然を押し付けられ、大量の高齢者を支えるため多額の税金を納めることを義務付けられた子供たち
何故、こんな世界に生まれなければいけないのかと、思う彼らのために、宮崎駿監督は「それでもこの世界は生きるにあたいする」「この世界は美しい」と必死で筆を走らせているのです。
(今回の作品は特に、自然の美しさ、壮麗な建造物、躍動感溢れる動植物たちの表現は息を飲むほど凄まじかった!)

雑誌SWITCHで鈴木プロデューサーが語っていたのですが、この映画は制作時間が無限にあったそうです。締め切りが無かったと。
一つのシーンに膨大な時間をかけられる。
そうすると、宮崎監督は次のシーンを忘れちゃったんだそうです笑
監督の想像力がおもむくままに進んで行くストーリー。
重要人物に見えるのに終盤まで全然登場しない大叔父なんかは忘れられちゃったから出てこなかったそうです

ストーリーのつじつまや整合性は無視。
そりやぁ観客は置いてきぼりです笑
登場人物は多くを語らず説明もなし。
盛り上がるシーンも特にない。
だから感情移入しずらく「分からなかった」「難しかった」という感想が目立つのも分かります。
特に今作はエンターテイメント性が無いなと強く感じました。
逆に、過去のジブリ作品は観客を楽しませようという意図が存分に盛り込まれていたんだな、と今更思いました笑

これだけエンタメ性を無くしても人を惹き付けられる映画を作れるなんて、ほんとに宮崎駿監督は天才です…!
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