君たちはどう生きるかのゆうのレビュー・感想・評価

偉大な名監督が、世間から駄作と評されてもうこれで終わっても良いと思いながら造った、自身の集大成のような。そういえば風立ちぬもそうか。その時も引退を仄めかしていたか。ここまで偉大なクリエイターになると自分の中の創作苦悩を吐露するだけでエンターテイメントになるんだなあと思う。比類なく美しい自己表現、悪くいえばまあ、マスターベーション。

何もかもが可能な創作の世界から、戦争と醜悪に満ちた現世へと戻る。現世をほんの少しでも美しいものにしようと物語を紡ぎ続けてきたということかもしれない。きらきらしてふわふわしたものを、こんな最悪な世界に送り込み続けてくれて本当にありがとうって感じだ。きっとあなたの生み出したものが繋がって、ちょっとやそっと石がずれたくらいではこの世界は破滅しなくなっていると思う。

映像の美しさはさすが、ジブリ作品の自然風景ってなんですぐジブリってわかるんだろ。脳みそに刷り込まれた原風景。脚本はアレな感じ。というかもうエンタメの方の才は枯れちゃってるんだろうなあ流石に。骨太かつワクワクするストーリーと至極の映像美、喪われた片翼を想いつつも観る作品でした。